「認知機能低下」という解釈で本当に良いのか?
介護施設で働いていると、本当にさまざまな利用者たちと出会います。
一見するとどうして「施設」を利用しているのか分からない人がいたり、黙々と車いすを漕いで、フロア内を走り回っている人もいます。
しかし、不思議なのは、どんな利用者も向き合って話すと自身の心情を見せてくれます。
「どこに行くんですか?」
「家に帰るんだ!」
「こっちは行き止まりですよ!」
別の配属先から来た利用者だったので、この先は入れないことを伝えました。
「そうか! 困ったなぁ…」
不謹慎ではありますが、本当に笑いそうなくらいでした。
なぜなら、その利用者は本当に家に帰るつもりでここまで来て、さらに何処かへと向かおうとしていたからです。
決して、何も分かっていないのではありません。
むしろ、何かが分かったからこそ、そこに真実があるとしてここまで来たのです。
「部屋に帰りたい!」と訴える利用者
ある利用者は、始終「部屋に帰りたい!」と訴えます。
朝昼晩の食事も要らないと言い介護士の声掛けにも応じないので、ベッドから起こすのもひと苦労です。
そんな中、やっとフロアに来ても、「部屋に帰りたい!」と叫び始めます。
しかも、起きている間、ずっと「帰えしてください!」と叫ぶ続けます。
問題はその利用者だけでなく、周囲の利用者にも異変が生じます。
「言いたくないんだけど…」
そうなんです。あまりに大声で叫ぶので、聞いている人が強いストレスになっていたのです。
そこで、問題の利用者を散歩に誘いました。
「ちょっと表にでも行きませんか?」
歩いている間、とても大人しく、問いかけにも素直に応じてくれます。
約20分ほど、二人で散歩して席に帰ってからもしばらくは静かでした。
ところが、また「部屋に帰して!」と叫び始めました。
実は、この利用者は視力がとても弱いこともあって、1人で歩くことができません。
また、オムツを使用しているのでトイレも使いません。
しかし、「部屋に帰りたい!」と叫び、「トイレがしたいから!」とも言ったのです。
別の介護士が、「トイレには行かないの!だから部屋にも行きません!」と言い聞かせようとします。
ところが利用者は聞き入れず、「部屋に帰りたい!」と叫び続けます。
また、介護士の立場では、昼から寝ていると、昼夜逆転してしまうと気になります。
日中はできるだけ起こしていたいという思惑もあって、「帰りたい」にあれこれと理由をつけて応じませんでした。
見方を変えると本音が見えてくる!?
ある瞬間、こみちはその利用者が最近になってオムツを使うようになったことを思い出しました。
また、オムツを使うようになってから「帰りたい!」と言い始めたのです。
つまり、周辺の様子を自分の目で確かめられない利用者にとって、オムツを付けているからと言ってどこでも用を足せるのかがポイントだと感じました。
「部屋に帰りたい!」は、「誰にも見られないところで用を足したい」ではなかったのか?
だとすれば、介護士がどんなに理由を伝えても、納得することはありません。
そして、散歩のように排せつとは無関係な出来事には影響がなく、「部屋に帰りたい」とは言わなかったのでしょう。