介護施設のイベントで
これはある介護現場の一場面ですが、イベントで利用者が広いフロアーに集められました。
いつもと異なる雰囲気を楽しんでいる利用者がいる一方で、戸惑い辺りをキョロキョロしている利用者もいます。
こみちを見つけたある利用者が、片手を振ってアピールします。
「どうしましたか?」
その方は軽い認知機能の低下が見られる人。
「おトイレですか?」
不穏な表情なので、笑顔で声かけさせてもらいました。
「トイレは行ったから!」
こみちとのやりとりに気づいた別の介護士が、横やりを入れます。
「うん。ここは…」
こみちが軽く制し、利用者に再び話かけます。
「トイレ来ますか?」
しかし、どうやら違うようです。
「どうしたの?」
利用者の脇に腰を落とし、見上げるような姿勢で問いかけます。
「ここ、出られなくなりそうで…」
改めて周囲を見ると、確かに多勢の人がいて、すぐにその場から出られない状況です。
「大丈夫ですよ。これからイベントするので、一緒に楽しみましょう! ほら、オヤツが配られていますよ!」
こみちの指差す方向を見て、「何だろう?」と聞いてくれました。
「アイスクリームとホットケーキみたいですね。〇〇さんは、好きですか?」
「アイスクリームが好き!」
「もう少し待っていましょう。今、運んでくれますよ」
介護士として嬉しいなと思ったのは、こみちの袖口をしっかりと掴んで離さないこと。
「〇〇さん、オヤツですよ!」
別の介護士が運んで来てくれました。
「良かったですね。でも食べるのは待ってくださいね。イベントのあいさつがあるみたいですよ!」
こみちが利用者の肩をトントンと叩き、やっと笑顔が戻って来ました。
「〇〇さん、私、この辺りにいるので、また声を掛けてくださいね!」
落ち着いたのを確認して、別の利用者の元へと向かいました。
介護士をしていると、本当に利用者から信頼されていると実感できます。
別の利用者の元に行くと、「これ何?」と早速の質問です。
「アイスクリームとホットケーキですよ!」
「アイスクリーム?」
「甘くて冷たいオヤツですよ! 好きですか?」
「知らない!」
「そうですか? きっと気にいってくれると思いますよ!」
この利用者も軽い認知機能低下があって、とても意識がはっきりしている時と、そうではない時があります。
「アイスクリームだっけ?」
「そうですよ。アイスクリーム!」
イベントのあいさつが始まり、司会役がマイク片手に話をしている間、こみちたちは「アイスクリーム」の話題を続けていました。
上手く食べられない利用者がいたら、その方の介助も介護士の仕事です。
「アイスクリームですよ!」
スプーンで口もとまで運ぶと大きな口で待っていてくれます。
「美味しいですか?」
何も答えてくれませんが、もう口が開いています。
「アイスクリーム、美味しいですね!」
最初に声掛けした利用者を見ると、別の介護士や利用者と談笑していました。
介護士は利用者の間で、手助けができる仕事です。
利用者は素直に喜んでくれますし、怒ってもくれます。
「呼んでいたのに!」とか「待っていたのに!」などと言われれば、もう少し対応できたかも知れないなど反省します。
約1時間のイベントですが、最後に歌を歌ってお開きとなりました。
そんなイベントが週に数回あります。
利用者との触れ合いがあるからこそ、介護士の仕事にはやりがいを感じます。