介護支援に違和感を感じる時は?

利き腕の手首に固縮を抱える利用者の支援


固縮(こしゅく)と聞いて、説明できる人はよく勉強されている方です。

現役介護士のこみちですが、施設で働き始めて知りました。

自宅介護の経験もなく、「介護」という業務がどのようなものかも知らなかったくらいなので、「固縮」を抱える利用者をどう支援すれば良いかなど考えたこともありませんでした。

幸いにして、固縮を抱えた利用者に出会い、衣類の着脱などを通じて「痛み」の訴えなどに触れる中で「固縮」というものがどんな状態なのかも体験する機会に恵まれました。

例えば、パーキンソン病を発症した場合に見られる特徴の1つに、「固縮」があります。

手足の筋肉が強張ることで、自分の意思に応じたスムーズな動きを阻害してしまいます。

上手く動かせないことで固縮した手足を使わなければ、さらに筋力が低下して動かせなくなってしまうのは想像できるでしょう。

食事が上手く食べられない!?


固縮を抱えた利用者は、時に食事が上手に食べられません。

利き腕が使えないとなれば、さらに苦労することでしょう。

さらに、「ちょっと食べさせて!」口の周りに食べ物を付けた利用者に呼び止められると、経験の浅いこみちは戸惑いすら覚えるのです。

「食べさせて!」

側に近づき、目と目が合った時に、追い討ちを掛けるように懇願されると、思わず箸やスプーンに手を伸ばしてしまいたくなります。

「ダメよ! こみち。食べることもリハビリなの!」

戸惑うこみちに気づいて、先輩介護士が駆け寄ります。

「早く食べさせてよ!」

「〇〇さん。自分で食べてください! これもリハビリです!」

先輩介護士の毅然とした態度に、こみちも背筋が伸びました。

「〇〇さん、食べてみましょう」

こみちもどうにか声を掛け、自分で食べるように促します。

しかし、残念ですがその利用者は、上手に食べることができません。

ギリギリのところで、食べ物が口に入らずに落ちてしまうのです。

「固縮」を抱える利用者との日常


入浴の前後や、寒い時期になれば上着の着脱も頻繁になります。

その度に、固縮を抱えた利用者の介助にも当たります。

「着健脱患」は、衣類の介助を行う時の基本です。

固縮を抱えた利用者の場合、「上着を着る時は先に固縮がある腕から」そして、「上着を脱ぐ時は固縮がない腕から」と順番があるのです。

難しい話ではありません。

衣類の着脱は、どうしても腕や手などに軽度ですが無理が生じます。

そこで、できるだけ痛みのある腕に負担が掛からないようにと「着脱脱患」の法則があるのです。

さらに言えば、固縮が指先にもある場合、衣類の着脱中に指が布地に引っ掛かり、無理をすると骨折さえ起こってしまいます。

そこで、介護士が利用者の手を包むようにしながら、布地に引っ掛からないように行います。

この利用者の場合にも、指先を包むようにしています。

「イタタタタ!」

「すいません。痛かったですか?」

「そんなに強く握ったら痛いだろう!」

こちらとしては、強く握ったつもりもないのですが、固縮した指や手に急激な力が掛かると痛みを伴うようです。

「これくらいならどうでしょう?」

さらに注意しながら介助を続けます。

「痛くなかったですか?」

「痛くない」

やっとコツをつかめました。

実務者研修の実技で行う衣類の着脱の授業とは、まったく異なる緊張感です。

介護士ではなく機能訓練指導員

理学療法士などの資格を持った人は、リハビリを行い利用者の心身機能の改善や維持に努めます。

固縮の場合にも、リハビリによって改善が期待できるとも言われています。

その内容や施術方法は専門家に任せるとして、理学療法士などは現場で経験を積む介護士とはスキルが異なります。

実際、固縮のある手に触れると、とても痛がりますし、着脱の時でさえやっと触らせてもらえるくらいです。

さらにそこから、施術を行い改善していけるリハビリの役割はどれだけ大きいものでしょうか。

考えてみれば、もしも固縮が少しでも改善し、今以上にスムーズな食事ができたらと考えると、機能訓練指導員の役割は重要です。

介護士として寄り添うことも大切ですが、知識や技術不足による限界も感じます。

普段の衣類着脱を手伝うことくらいしかできないことに、時々、専門知識があったらなと思うのも事実です。

調べてみれば、理学療法士や作業療法士になるには、3年制の養成校で学び、国家資格を取得しなければいけません。

ここでも、「3年間」の時間を当られるか否かで、利用者との接し方が決まります。

介護士を経験したからこそ


介護士には介護士の役割があります。その多くは生活支援です。

朝起きて寝るまでの日常生活で起こるさまざまなことを支援します。

生活支援によって、出来なかったことが出来るようになることもあります。

1人でズボンを脱いで便座に座れない高次脳機能障害を抱えた利用者は、日常生活の手順が分からなくなったりします。

何度も繰り返す中で、指示がなくても自分から次の動作に移れることも介護の一部です。

小さなことではありますが、利用者にとっては大きな進歩で、もしかすると一連の動作が出来るようになるかも知れません。

介護士としては、そんな小さな発見をいつも見つけるのです。

「上手に出来ましたね!」

声かけに笑みを浮かべてくれることもあります。

ただ、介護士の場合、至る所で頭打ちを感じます。

もう少し役に立てたらなぁと思う時には、介護士以外の職種に憧れることも。

しかしそれも介護現場で「介護」に直面したからこその話。

まだ始める前からあれこれと考え過ぎるよりも、まずは介護士としてできることを始めてみるのもアリでしょう。