介護現場で感じる「ありがとう」の意味
少し残念なことを紹介しておきましょう。
利用者から、または他の介護職から言われる「ありがとう」は、「貴方への労い」の言葉でもあります。
つまり、「本当に助かったわ!」という感謝以外に、「頑張りましたね!」というお褒めの言葉なのです。
よく、介護の仕事は「ありがとう」を言われる仕事などと称したりします。
実際に相手から「ありがとう」と言われると嬉しい気持ちになるでしょう。
しかし、その「ありがとう」が、相手を勇気付けたりやりがいを感じたりすることを「利用者」である彼らはよく心得ています。
だからといって、その「ありがとう」をウソだと思う必要はありません。
むしろ、もっと深い意味で、利用者と介護士は繋がっていることを感じて欲しいのです。
一期一会という気持ち
日本人の平均寿命は、女性が87歳、男性が81歳前後のようです。
言い換えれば、この年齢よりも長生きする人もいれば、その年齢を迎える前に天国へと旅立つ人もいるわけです。
私たち介護士が利用者に接するとき、彼らの健康そうな表情に年齢を忘れてしまうことがあります。
しかし、中には「平均寿命」を5年も10年も超えて長生きしている利用者も多いのです。
それだけに、彼らの「1日」は毎日が特別です。
だからこそ彼ら自身も、穏やかに気持ちよく過ごしたいと思っています。
「ありがとう」があることで、利用者も嬉しいですし、それを聞いた介護士もやる気になれるのです。
認知機能が低下した利用者からも「ありがとう」と言われることがあります。
トイレに誘導しても、その場所が何をするところなのかよくわからずにいる方なのですが、「オシッコしましょう!」というと少し反応が見られます。
「ここ(便座)に座りますよ!」ズボンを下ろして、利用者が腰掛けてくれます。
「(オシッコして)いいの?」と聞かれるので、「いいですよ」というと、排尿を始めます。
「出ましたか?」便器に当たる音でも用を足したことが分かるのですが、うなづいたり立ち上がろうとしたりして教えてくれます。
「大変な仕事だねぇ」とか、「いつもありがとう」と言われるのも、トイレという個室の中。
利用者の多くがフロアにいる時とは異なる表情で、また別の言葉で語り始めます。
「本当はもっと早くトイレに行きたかったの」
「言ってくれたら良いのに」
「でも怒られるでしょう!?」
「怒らないよ。だから教えて」
そんな会話の後にも「ありがとう」なのです。
そんな風に個々の利用者から聞いた気持ちをフロアにいる時から反映させているつもりですが、時間に追われて動き回っていると「お願いします!」を言い難くしてのかも知れません。
「トイレに行きませんか?」
大体2時間から3時間程度間隔が開く頃に、トイレ誘導が必要な利用者に声を掛けます。
「まだ良いわ」ということもありますが、徐に立ち上がりトイレに歩き出す利用者もいます。
こみちは「ありがとう」と言ってもらえない時に喜びを感じるようになりました。
実は、自宅での介護で最も注意したいのが互いへの感謝です。
家族の場合、なかなか「ありがとう」とは言いません。当たり前になっていたり、照れ臭さもあるからです。
しかし、本当は「ありがとう」があると、言われた本人は嬉しいもの。
こみちも最初はそうでした。
今は、「ありがとう」も言わないほど、介護が自然になってくれたらと感じます。
むしろ利用者の表情やリラックスした様子を見て、やりがいを感じています。
この精神は、介護士同士にも使えます。
最も分かりやすい表現として「ゴミ捨て、ありがとう!」と声掛けします。
自分の作業をフォローしてくれた時も、「ありがとう。助かったよ!」と声掛けします。
そうすることで、他の介護士も手伝ってくれますし、こみちが不快に感じていないことを伝えられるからです。
実際に、「ありがとう」を上手に使えと介護士同士の連帯感もアップしますし、仕事がキツくてもやりがいや達成感となります。
注意も必要
「ありがとう」という言葉は、相手をお客様にしてしまいます。
何でもかんでも、事あるごとに「ありがとう」と言ってしまうと、場合によっては阻害感に繋がることがあるからです。
こみちが「ありがとう」と言われないことに嬉しさを感じると紹介しましたが、まさに同じ感覚で、何かする度に「ありがとう」と言われるけど、「特別なことしていないのになぁ」と思う人もいます。
いずれにしても、「ありがとう」はとても相手を思いやる言葉です。
さり気なく気持ちを表現できると、現場も明るくなります。