介護を楽しむコツ

介護は利用者次第!?


こみちが働いている介護施設は、介護老人保健施設です。通称、老健と呼ばれています。

いろいろなタイプの介護施設がありますが、「老健」の役割は、医療的なケアを終えた利用者が、自宅復帰できるように支援することでしょう。

毎回、自宅から通ってくるデイサービスほどではありませんが、早い人なら1ヶ月から3ヶ月ほどで自宅に戻られることも多いのが特徴です。

介護士として働いていると、利用者の人間性に度々感心されられます。

例えば、認知症と診断されたある利用者は、自分でトイレを使うことが難しい状態です。

トイレという場所を何となくイメージしているものの、どこにトイレがあるのか、用を足したい時にどこに行けばいいのかが明確ではありません。

そんな状況ですから、時にはお漏らしをしてしまうこともありますし、ごみ箱をトイレと間違えてしまうこともあります。

同様に、食事の際に提供する食べこぼし予防のエプロンを装着しても、勝手に取り外してしまいます。

気づけば、丸めてあったり、着ている洋服の中に入れてしまったりもします。

介護士である我々の役割は、大きく2系統あって、1つは利用者の安全を確保するために見守りを欠かしません。

そして、もう1つは、失われた認知機能の支援と回復を促すことです。

特に失われた認知機能に関しては、入所時と比べて明らかに回復することも珍しくありません。

それは、自宅での介護を経験している利用者家族でさえ驚くほどです。

もっとも、それは健康的な状態に回復したとは言い切れません。

なぜなら、認知機能が低下した利用者は、少しの環境の変化でも「不穏(ふおん)」な状態になりやすく、完全に見守りなしで同じことができるとは限らないからです。

それでも、反応が良くなる利用者を見ていると、介護士としてのやりがいも感じられます。

「いつもありがとう!」

「あなたがいてくれて安心する」

介助の途中で耳にするこれらの言葉は、もちろん介護士として嬉しいことですが、利用者の人間性を見た気分にもなります。

目の前に見えているものが何のためにあるのか分からないほどの認知状態なら、その場にいることさえとても不安なはずです。

まして、自宅から介護施設へと生活場所を変えるのも、すぐには慣れないでしょう。

それでも、我々介護士に見せる笑顔は、その人の豊かな人間性に触れた気持ちになります。

「あなたも召し上がりなさいよ!」

ある利用者に食事を提供すると、手渡したスプーンを我々介護士に返そうとします。

「これは、〇〇さんの食事ですよ!」

笑顔で促すと、「あら、そうなの!?」と少し戸惑いながら差し出したスプーンを握り直します。

入所時の頃なら、スプーンを手にしても受け取るだけで、目の前の食事を自分で食べることが難しかった利用者です。

そんな人に支援を続けると、少しずつ本来の個性を取り戻し、他人への優しさや感謝を伝えようとします。

ある利用者だけに見られるものではなく、形は異なっても何らかの方法で利用者は感謝を伝えてくれます。

「美味しいですか?」

一人で食べられるようになった利用者に声かけると、ニッコリと微笑んだり、小さくうなづいたりしてくれます。

もちろん、そんな状況になっても失敗はあります。

食べこぼしもありますし、コップにおしぼりを入れたりもします。

「何でそんなことをするの! ダメでしょう!」

そんな声かけは必要ありません。

なぜなら、利用者も悪気はまったくないからです。

単純に、コップとおしぼりの役割が分からなくなったに過ぎません。

「新しいお茶を用意しますね!」といって、その時は伝わらなくても、声かけして新しいコップとおしぼりを提供するようにしています。

分かってもらえないことも多いですが、長い目で見ると1ヶ月前よりも格段にできることが増えていて、コミュニケーションもしっかりとします。

ごみ箱をトイレだと思った利用者も、「肌着を下ろせたら、今度はズボンを上げましょう!」と伝えると、少しずつですが自分で衣類を整え始めます。

「トイレに行きませんか?」

我々介護士は「トイレに行きましょう!」と断定的な聞き方をしません。

必ず、利用者にどうしたのかを「確認」します。

もちろん、それで判断を誤り、結果的に衣類を汚してしまうこともあります。

しかしそれも次第に少なくなり、「行ってみようかな?」と自分なりに判断できるようになります。

強制するのではなく、あくまでも利用者自身に考えてもらうことで、支援の内容が段々と変化していきます。

介護士の仕事は、ストレスもたまります。根気も必要です。

しかし、他業種にはない魅力を感じられるのも事実です。

特に、介助を求めている人と向き合うことで、その魅力は何倍にも増すでしょう。