介護士と利用者の関係
介護施設に勤務していると、さまざまな利用者と関わります。
しかし、利用者との信頼関係が築けているかは、彼らの視線を見れば簡単に分かります。
例えば、複数の利用者や介護士が入り乱れてレクリエーションをしていたとしましょう。
利用者が輪投げやボール投げなどをした時に、介護士たちが手を叩いて歓声をあげます。
利用者も達成感があり、嬉しそうに微笑むのですが、その時に誰を見ているかが重要です。
通常、レクリエーションのMCを見るのが一般的です。中には隣に座る利用者という場合もあるでしょう。
ただし、特に信頼している介護士がいると、その人に微笑み掛けることもあります。
利用者だけでなく、人は心許せる相手と繋がっていたいもので、喜びもまた分け合いたいのでしょう。
言うことを聞き入れるのは相手を信頼しているから
高齢者は幼い子どもではありません。生活の一部を支援されていても、大人の人なのです。
「ダメでしょう!」
そんな声かけでは納得もしませんし、指示にも反発します。
もちろん、子どもたちだって経験に乏しいだけで人格はあるのですから、理由を示さない言葉では動きたくないでしょう。
「イヤです!」
何か伝えた時に、利用者が強い拒絶を示すことがあります。
それは信頼関係が十分ではない場合に多く見かける状況です。
その場面を迎えた時点で、介護士が高圧的に言い聞かせようとしても、指示に従うかもしれませんが、根底にある反発が解消した訳ではありません。
時間に追われるあまり、無理矢理を常態化してしまうと、施設内の雰囲気はどこか不自然になってしまいます。
もしも、強い拒絶を受けたら、同じ介護士がさらに何かをするのは逆効果です。
そうなる前にどうするのかを改めて考えることにして、別の介護士に対応を代わりましょう。
別の介護士が同じアプローチを繰り返さないことがポイントです。
利用者はすでに気分を害しているので、同じような説明を受けても納得できません。
「ゴール(最終的な目的)」は一度横に置き、たわいない会話から持ちかけるのがポイントです。
「もうすぐ昼食ですね。お腹空きましたか?」
「うん」とでも答えてくれたら、「どんなオカズでしょうね!」くらいで話題を広げます。
もしもこの時点で軽い拒絶反応を感じたら、「ゴール」の緊急性を踏まえて、無理強いしないことも必要です。
信頼関係が築けると、利用者とのコミュニケーションは格段にスムーズになります。
だからこそ、焦った応対は避けるべきなのです。
その際も利用者がどこを見ているかがポイントです。
話し手に顔を向けようともしない場合、その介護士に特別な信頼を感じていません。
残念ですが、顔を向けたり、見つめてくれなかったりした時は、信頼関係を1からやり直しする覚悟が必要です。
仕事ができるか否かだけではない!?
実際に多くの利用者を観察していると、要求する内容に応じて介護士を選んでいたりします。
こんな用事はこの介護士で、これならあの介護士。そんな使い分けを利用者もしているのです。
ただ、利用者の視界は我々ほど広くありません。
横から話しかけても誰なのか分からないこともあり、見ようによっては無視されるかもしれません。
しかし、それは話し手に気づいていないだけで、しっかりと視界に入る場所から声かけすることもポイントです。
どこからどんな風に声かけすればいいのか、それは介護技術になってくるでしょう。