いい介護施設の作り方

介護士として働くからこそ


介護未経験者にとって、「いい介護施設」を見つけるのは大変です。

一般的な会社選びを当てはめれば、「社会保険」の充実と「給料を含めた報酬」を目安になるでしょう。

しかし、多くの介護施設が介護保険の報酬を各従業員の給料に当てていることを踏まえれば、原則、同じ条件の利用者にサービスを提供しても企業が受け取れる「報酬」は同じです。

言いかえれば、介護施設の経営母体によって「補填」できたり、オプション扱いのサービスを提供したりすることで、「売上」をアップするしかありません。

結局のところ、介護施設はどこでも同じような悩みを抱えています。

それでも、「いい介護施設」と「オススメしない介護施設」があります。

現役の介護士として意見できるなら、「利用者のため」に働ける職場環境がどれだけ整っているのかがポイントだと思います。

もちろん、月々の給料は多いに越したことはありません。

しかし介護保険の制度を考えれば、一般企業のように「大ヒット商品」で売上を大幅に伸ばすようなことは難しいのです。

少ない人手で職場を回せれば、それだけ個々の介護士に多くの報酬を支払えます。しかし、一人ひとりの介護負担は増してしまいます。

つまり、介護現場でテキパキと動ける介護士ばかりなら、施設としても報酬をあげる余地はできくるでしょう。

一方で、介護未経験者が多かったり、派遣スタッフを雇い入れていれば、それだけ人件費がかさむので、報酬をアップすることも難しくなります。

そのあたりの舵取りは施設長の手腕にかかってきますが、報酬の出し惜しみは離職率にも影響してくるでしょう。

高すぎる報酬と高い離職率には注意!?


一年後、どれだけの人が同じ職場に残っているでしょうか。

離職率が高ければ、それだけスタッフの出入りも激しく、利用者に対しても行き届いたケアができていない可能性があります。

実際に介護技術の高さは、ある一定の効果を与えますが、利用者の心を落ち着かせられるかは別の話です。

利用者の人なので、介護士の態度には敏感です。

介護技術は正しくても、「冷たい扱い」を受けたなら利用者の心に寂しさも起こるでしょう。

はっきり言えば、気になる利用者がいるからこそ介護の仕事を続けられるところがあります。

利用者の人間性に惹かれるからでしょう。

思うに、「心を込めた介護支援」を業務としてスタッフに浸透させるのは簡単ではありません。

高級ホテルのベルボーイのように、客のサポートだけに専念すればいいとも言えないからです。

特に認知機能が低下した利用者の場合、口で説明するだけでは理解してもらえないこともあります。

根気よく説明をしていく部分と、安全性の確保や業務上の都合から工夫を加えたりもします。

工夫こそ経験値なので、介護現場やこれまでの人生経験が関わってきます。

20代の若い介護士と、我々のような中高年では、学び方にも違いが出てくるでしょう。

新人研修が、介護の基本テクニックの範囲なら、わりに実践しやすいはずです。

しかし、介護施設として、さらに上質な介護支援を目指そうとすれば、「心を込めた介護支援」を具現化しなければいけません。

実は、この取り組みにこそ、多くの時間とコストが掛かります。

研修に多くのコストを掛けるには、それだけスタッフの報酬を抑えることにもつながります。

予算の立て方も、介護施設は難しいのです。

いい介護施設の見つけ方


もっともオススメの方法は、「目的を明確にする」ことです。

報酬優先で施設を見つけるのも1つの方法です。また、幅広い経験を身につけるというのも1つです。

いずれにしても、入職して「自分は何をこの施設で得たいのか」ははっきりとしていれば、大きな失敗にはなりません。

逆に、あれこれと要求だけが膨らんでしまうと、特徴ある介護施設でも不評になってしまうでしょう。

また、日勤帯で働くつもりなのか、夜勤帯を含めて働くのかでも、給料設定が自身の希望に合っているのか比較できます。

決められた業務が増えるほど、介護の仕事は「キツく」なります。

なぜなら、利用者と話す時間も取れず、忙しく動き回るだけになるからです。

未経験者の場合、ある程度研修に力を注いでいる施設にした方がいいでしょう。

利用者目線に置き換えても、「いい介護施設」は同じように導き出せます。

先ずは、自宅での介護なのか、介護施設に入るのかが大きなポイントです。

そして、施設を選ぶ際は、月額の予算を個々に設定してみましょう。

ない袖は振れないので、それぞれの事情に合わせて、どれぐらいが上限のコストになるのか見積もります。

さらに、「本当に譲れないサポート」は何かを見つけることです。

本来であれば、介護施設内の雰囲気や介護士の対応など抜きに判断することはできません。

なぜなら、利用者の日常生活が大きく変化するからです。

ちょっと不安になった時、ステーションに行けばスタッフが対応します。

その際、笑顔で微笑むスタッフに名前を呼ばれるのと、事務的に処理されるのではまったく受ける印象が違うでしょう。

しかしながら、その質を向上させるのは、どこの介護施設でも苦労しているはずです。

そして、そこまで手が回らずに、個々の介護士に任せているのが実情でしょう。

組織として取り組んでいないと、気に入った介護士が異動や退職をすれば、施設の印象がガラリと変化します。

それだけに、利用者としていい介護施設選びは、何度も足を運んでみないと分かりません。

短期入所(ショートステイ)を利用してもいいでしょう。一泊くらいでは全貌まで分かりませんが、雰囲気くらいは感じられます。

特にスタッフの対応をチェックしましょう。

単純にデスマス調なのかではなく、利用者に対してどんな態度を取っているのかがポイントです。

介護士は、利用者の手足となる人なので、お願いしやすい雰囲気も必要です。

一方、日々の食事にも着目しましょう。

なぜなら、利用者にとっての大きな楽しみになるからです。

コストに合った料理が提供されているのかに加え、どれだけ工夫がなされているのかもポイントです。

季節感や食べる楽しみを理解して、食事が提供されていれば十分です。

介護士の立場からすると、食器の材質はある程度目をつぶるところでしょう。

プラスチック製の器を嫌う人もいますが、落としても壊れないなど、状況によっては安全面に優れているとも言えます。

まだ健康な頃は、食材だけでなく、テーブルに飾られたお花なども満足度の高い食事に欠かせないかもしれません。

しかし、「何を求めて施設を選んだのか」に立ち返れば、どこまでを優先するかは個々の事情によって見切りも必要です。

こだわらない部分をシンプルにすれば、それコスト削減に繋がります。