ある利用者の言葉に耳を傾ける

介護施設にどんな意味を持たせるか?


こみちが心掛けている介護は、「利用者の希望を最大限に尊重すること」です。

嫌だと拒絶することを強いたりしません。

介護経験のある方にすれば、「そんなことができるものか!」と笑われるでしょう。

例えば、眠いと訴える利用者がフロアーで騒ぎ出しました。あと15分すれば、利用者全体で行う予定が待っています。

「もう少しで、〇〇するから起きていましょう!」

「〇〇があるんで、今は眠れませんよ!」

いずれにしても、寝かさずに騙し騙しの声かけで、その場を凌ごうとするのです。

でも、「少し休みましょう。でも、15分したら一度、声かけしますね」と伝えます。

どこがどう違うのか差を感じない人もいるでしょう。

明確な違いは、誰がその行動を支配しているのかという点。

「起きていよう」とか、「眠れない」というのは、介護士の都合でしかありません。

利用者にとって大切なことは、介護士に管理されることではないにです。

あくまでも、利用者ができないことを介護士にサポートして欲しいだけなのです。

しかし、介護士の中には大きな勘違いをして、利用者を支配しようとします。

「〇〇してください」とか「ダメだって言ったでしょう」という言葉は、そんな介護士の特徴です。

面白いもので、「15分後に声かけ」すると利用者は間違いなく起きてくれます。

もしも起きないとすれば、本当に体調不良なのかも知れません。

我々中高年の世代が思うよりも、ずっと彼らは約束を守る人たちです。

ただ、認知機能の低下などが伴うことで、約束そのものを忘れてしまっているだけなのです。

これは、別の利用者から聞いた言葉。

「オレもバカだから、こんな所に閉じ込められたんだ」

聞いたのは、要介護5と呼ばれる寝たきり状態の利用者から。

1日のうち、そのほとんどをベッド上で過ごしています。

自分で寝返りを打つことも難しいので、定期的に身体の向きを変えるのも介護士の大切な仕事です。

そんな業務中に、普段はほとんど話すこともない利用者から聞かされました。

「エエ? 何か言いましたか?」

利用者の声を聞いたことはありますが、こんなに長い言葉を耳にしたことはありません。

しかも、内容が内容だけに、その意味を知る必要があります。

「オレもバカだから…」

2度目も冒頭は同じでしたが、その後は話してもらえませんでした。

もしも、「こんな所」が介護施設や自分のいる部屋だとしたら、「閉じ込められた」原因は何でしょうか。

もちろん、その答えは本人にしか分かりません。

ただ、別の利用者から聞いた言葉から想像すると、1つの解釈を想像することができます。

別の利用者が言ったのは、「できることなら自宅で暮らしたいけど。家に帰っても1人だから、誰にも気付いてもらえないかも知れないし。ココなら、誰かいるもんなぁ」という内容でした。

正直、返す言葉がありません。

利用者にとっても現実を知っての介護施設での暮らしなのです。

そう考えると、介護士の言動にも我慢しているはずです。

実際、利用者多くは辛抱強いと思います。

下手だから嫌だという利用者はほとんどいません。

場合によっては、こちらが心配になるくらいです。

その証拠に、冒頭に紹介した利用者は、こんな言葉も言ってくれました。

定期的な体位変換で、横向きの姿勢になってもらった時です。

その利用者は自分で動くことができないので、こみちが間違えると、次の体位変換までその姿勢のまま過ごさなければいけません。

「もう少し腰を引いた方が楽かなぁ」

こみちは自分に問いかけたつもりでした。

にも関わらず、「これで良いよ!」とはっきり言ってくれたのです。

「ああ、そうですか」

声に驚きながらも、何だか嬉しく思いました。

それにしても、「閉じ込められた」とはどういう意味だったのでしょうか。

しかし、その意味を聞き直したとしても、こみちには何もできません。

だからこそ、その意味を知るよりも、少しでもココで暮らしている時間を有意義にしてあげたいのです。

業務がない時でも「寒くないですか?」「身体を少し動かしましょう」という寄り添いがその利用者の気持ちに寄り添えると思います。

利用者のちょっとした言葉に耳を傾けると、その人の気持ちや考え方に触れることができたりします。