私たちは自分の仕事である介護職を誇れるのか?

利用者に会いに来る家族たち


週末になると、施設の入居者に面会する家族の姿があります。

こみちの勤務する施設では、全体の3割を超えることも珍しくありません。

多くは、利用者の様子を見に来たり、必要な日用品を届けたりします。

我々現場を守っている介護士としては、元気そうな利用者を目にした家族の安堵する表情を嬉しく思っています。

「こんにちは!」

「ありがとうございました!」

利用者家族の訪問に気がつくと、忙しい時でもできる限り明るく声掛けをさせてもらっています。

その理由は、「面会に来た家族を迎え入れることだけでなく、利用者に代わって施設での生活が安全で安心だと伝えたい」からです。

「お世話になります」

「いつもありがとうございます」

利用者家族の多くは、そんな言葉で私たち介護士に笑顔を返してくれるのです。

しかし、中には無言で頭を下げることもしない人もいます。

男性の面会者に多いのですが、「母親(又は父親)は?」と無言のまま問い掛けてきます。

「〇〇さんは、こちらです。案内しましょう!」

面会者の心情を察し、利用者のもとへ家族を誘導します。

介護士は、利用者の些細な変化を常に観察しています。なので、訪問者についても同じように観察してしまいます。

「来たよ!」

利用者を見つけると案内されたことも忘れてしまう方もいるのですが、介護士としては任務を果たせたと感じ、本来の業務に戻ります。

介護士になろうと思った時、「ありがとう」と言われる仕事だと紹介されていました。

実際、利用者からは1日に何度も「ありがとう」や「すまない」と言うような言葉を掛けられます。

「本当は年寄りの世話なんてイヤでしょう?」

などと、トラップのような問い掛けも耳にします。

しかし、「そうですねぇ」とは言いません。仮に心のどこかで思っていたとしても「利用者の思い」を踏まえて、「良いところ」や「改善したこと」を紹介し、それが嬉しいと伝えます。

介護は、マイナスを探せばいくらでも見つかりますし、プラスを探せばやりがいや目標につながります。

つまり、自宅での介護が難しい要因の1つは、身内故に歯痒さや失望感など、マイナス面が目につきやすくなるからでしょう。

施設の方針ではありませんが、さまざまな背景から自宅での介護が難しくなった利用者とその家族が、少しでも施設での暮らしに満足してもらえたらと思っています。

時には心情を察することでもありますが、時にはひたすら体力勝負のこともあります。

良い介護士ほど、その両方に長けています。

現場経験や人生経験、幼少期の育てられ方などによって、心情を察する能力は変化します。

言い換えれば、個人を尊重されて育った人は、「正当である」と言うことから視線を変えることができません。

「私はお金を支払っている」

利用者家族の中には、そんな気持ちが見え隠れする態度の方も少数ですがいます。

もちろん、介護士として働いている人の中で、そんな人を避けたり責めたりする人はいないでしょう。

むしろ、介護士は、利用者だかでなくその家族に対しても同じような気持ちで接しています。

悪いところを非難するのではなく、良いところを探し伸ばすのです。

介護士になって変化した気持ち


介護になって変化したのは、失敗に対して寛容になったこと。

相手がミスをしてもイヤな気持ちになりません。

もう一度、やり直せば良いし、こちらがカバーすれば良いと考えられるようになります。

これは、介護と言う仕事を経験して身についた心の動きです。

「なんで失敗するの?」

そこを責めても話が進まないことを体験によって学ぶのです。

相手のペースに合わせることもできるようになりました。

「こんな感じで良いですか?」

時には相手に伺いながら、頃合いの良いところを探します。

利用者家族を見た時にも、「距離感」には気を使います。

素っ気ない応対では嬉しくないでしょうし、馴れ馴れしく接してもお節介になるでしょう。

「こんにちは!」

そのあとは、利用者家族の様子で変化をつけています。

最近の様子を説明することもあれば、利用者に家族が来たことを伝えて誘導するなど、その時の状況で異なります。

その意味では、肉体的にも精神的にも疲労が伴いいます。勤務終了が近づく時間帯は、足が止まって来るのを感じるほどです。

「利用者に何ができるだろう?」

利用者だけでなく、その家族を思うと、できることを後悔なくしてあげたいのです。

実際、80代や90代を迎えた利用者の健康状態は日によって変化します。

今日一日でも、体調は変わります。

「明日、来た時にしてあげよう」と思うなら、「少しでも今、しておきたい」のです。

それでも、介護は自己満足の世界かも知れません。

いずれにしても、介護の仕事は相手の先回りが求めれ、それを表に出さないことも重要です。

それだけに、配慮に気づかれないことも多々あります。

介護士同士の中で、そこをフォローできれば、介護の質が向上するでしょう。

一方で、上司が疎い人だと、表面的な仕事にしか目が届かなくなってしまいます。

それでも手を抜かずに介護できると職場の雰囲気も変化しますが、評価も支持ももらえない状況に屈してしまうと、介護士として伸びなくなってしまうでしょう。