介護の現場でもイジメはある!?
そもそも「イジメ」とは何でしょうか?
この記事での「イジメ」とは、受け手が不快に感じ、それを意思表示している状況なのに、行為を継続していることだと定義します。
介護施設で起こる「イジメ」は、大きく4パターンあります。
- 介護士が利用者に対して行うケース。
- 介護士が同僚に対して行うケース。
- 利用者が介護士に対して行うケース。
- 利用者が利用者に対して行うケース。
いずれの場合にも共通しているのは、イジメ側がイジメられる側に対して優位性を誇示することです。
加齢や障がいが原因で、日常生活がスムーズに行えない利用者が介護施設にはたくさんいます。
食事中に食べ物をこぼしたり、動作が遅くなってしまうことがあります。
そんな利用者を見て、介護士が「こんなこともできないの!?」と言ってしまうのです。
利用者によっては、言われた内容を理解できないこともあるでしょうし、理解しても反論せずにやり過ごすこともあるでしょう。
社会的に弱者だということに漬け込んだ応対は、紛れもなく「イジメ」です。
また、介護士同士でも「イジメ」は起こりえます。
例えば、ある介護士が利用者にお茶を配ったとしましょう。その途中でコールが鳴り、作業を中断して特定の利用者の対応に向かったとします。
もしも、仲間から一定の評価を受けている介護士なら、中途半端になったお茶配りも、誰かが黙って後作業をするでしょう。
そして、コール対応を終えた後、「お茶配りありがとう!」で何事も起こりません。
しかし、これが評価の低い介護士なら、「何でお茶配りもできないの!」という批判につながります。
さらに、本人には言わずに、「あの人ってお茶配りもできないのよ!」という言葉だけが仲間内に行き渡るのです。
「あの人はダメ!」というレッテルを貼る行為も、「イジメ」に含まれます。
イジメる人の特徴
イジメをする人は、正義感が強いのかもしれません。または、平等である意識にこだわりがあるのでしょう。
もちろん、そんな考え自体がすべて「イジメ」につながるとは限りません。
さらに、「イジメられたくない!」という心理が強い人ほど、他人をイジメてしまうのではないでしょうか?
例えば、自身の仕事に自信がない人は、他人のちょっとしたミスや勘違いを見つけて指摘しようとします。
これだって、「注意してね!」で終わらせることができるのですが、「何でそれができないの!」と指摘するから人間関係がこじれるのです。
また、経験不足から取りこぼしがあるなら、さり気なくフォローしてもいいはずです。
実際、フォローされたことに気づける人はいるはずですし、そんな人は仕事に慣れればミスも減ってきます。
ただ、仕事をある程度覚えた頃になると、職場への不満が蓄積し、仕事自体は嫌ではなくても、転職や配置換えを希望するでしょう。
介護士の離職率の高さは、そんな原因も少なくないと思います。
一方で、ミスを指摘された時に、「あの人は嫌がらせをする!」と感じる人もいるでしょう。
単純に仕事が不完全なだけなのに、そのことを棚に上げ、言われた事実を根に持つ人です。
それでも介護の仕事がある程度できれば良いのですが、まだ経験が浅い状態で被害妄想が極端に強いのも職場環境を壊してしまいます。
他人からイジメられた経験を持った人は、後輩や新人に同じ経験をさせたくないと思う人がいる一方で、無意識のうちに自分の受けた苦い経験を繰り返してしまう人がいます。
つまり、イジメが連鎖し、その職場の人間関係がいつまでも歪なままになってしまうのです。
大人が大人を注意する難しさ
介護の現場では、40代や50代の新米介護士も少なくありません。
上司や先輩が、20代30代というケースもあるでしょう。
仕事でのミスは、年齢に関係なく、適切に指摘をして修正するのが本来の姿です。
しかし、年齢を気にするあまり、注意に遠慮やためらいが生じることもあります。
我々中高年の介護士は、そんな若い指導者の配慮に気づかずに、自分で勝手に「できる人」になってしまわないように心がけましょう。
オムツ交換で、洗浄が不十分だったとか、適切に着用できてしないとか、自分ではできているつもりでも指摘されなければミスに気づけないことがあります。
他人から指摘されなくなったら、そこからは自分で成長するしかありません。
そのことにも気づかないで、持論やこだわりを貫くのは、結局、他の介護士や利用者の迷惑です。
「気づいたことがあったら、何でも言ってください!」
それくらいのアピールをしておかないと、中高年の方は他人から腫れ物を触るような存在になりかねません。
いつしかシフトから外されて、自分の置かれた立場に気づかされることになるでしょう。
介護における自立支援の意味
初任者研修などを受講すれば、「自立支援」という言葉を学びます。
本来なら、利用者に対して行われることですが、介護士同士にも当てはまります。
自立支援だからといって何でも許されるのではなく、「自立」に必要な支援を惜しまない「介護支援」なのです。
介護士同士でも、それぞれが上達を目指すことが前提にあり、だからこそ「相手を思って指摘」もするのです。
関係を壊したくなければ、無難に振る舞えば良いのですから。
実際、介護施設で働くと、利用者だけでなく、同僚にも気を使います。
注意とは言わないまでも、気づいたことを言うべきかどうか悩みます。
言ったことで誤解されても困りますし、言わなければ相手はまた同じミスをするでしょう。
そんな時に、しっかりと指摘してもらえるのも、「人がら」になります。
幅広い年代の働く介護施設だからこそ、そこでどんな風に見られているのか考えることも大切です。
「自分は自分」
そんな気持ちでは、介護の仕事はできません。
こだわりやプライドは、一度どこかに置いておき、仕事を覚えることに専念しましょう。
また、利用者に接する時も、相手がどうして上手くできないのかをいっしょになって考えることが大切です。
決して、自身の優位性や相手を見下した態度は解決に繋がりません。
相手に寄り添うには、しっかりと相手の立場から考えることが必要です。
なぜ、「イジメ」は無くならないのでしょうか?
自分本位の「虚栄心」を人は簡単に捨てられないからでしょう。
生活支援に密接しているからこそ、介護の仕事は人間性を問われます。
無意識に他人をイジメてしまう人は、周囲から人間性を疑われていることに気付きましょう。
案外、「イジメっ子ですよね!」などとは指摘してもらえず、「今日は、あの人と一緒かぁ!」と影でため息をつかれていたりします。
イジメを減らすには、それぞれが自身の振る舞いを意識するしかありません。
「自分だけ良かったらイイ!」と思う人ほど、「イジメ」に走ってしまうのでしょう。
ここで改めて、利用者の「自立支援」の意味や目的を再確認したいものです。