介護の基本 排せつ介助をマスターする

3段階ある排せつ方法を知る


健康な私たちのように、布のパンツを着用しトイレを使用する利用者がいます。

尿意も便意もあり、座位が保持できるだけのADLが期待できる人です。

そんな利用者がまれに漏らしてしまう場合、布パンツの内側にパットも装着します。

パットは吸水性に富むので、漏らした時にも下着や衣服を汚しません。

お漏らしの頻度が増えてくると、「リハビリパンツ(通称:リハパン)」と呼ばれる紙製のパンツを使用します。

パットだけでなくリハパンも吸水性があるので、軽度の場合には衣類を汚さずに済みます。

座位が取れる人なら、トイレの便座に腰かけてもらい用を足します。

利用者の歩行能力によっては、ベッド脇に設置できるポータブルトイレを使用することもできます。

特に夜間帯には、トイレまで一人で行き来することが不安定な場合にポータブルトイレを使います。

トイレ同様にポータブルトイレの場合にも、便座に座れることが前提なので、座位が保持できることが条件になります。

尿意や便意が不明確で、歩行や座位に不安がある時はオムツを着用します。

正しく着用すれば、漏れの心配もないので、介助しやすいのが利点です。

しかし、利用者にしてみればこれまでトイレを使用してきた習慣が失われるほか、寝たままでオムツに用を足すのは不安感も募ります。

自宅介助の場合には、介助される人の好みもあって、オムツへの切り替えが施設介護の場合よりも遅くなります。

完全に感覚がないのであればオムツ一択ですが、時々やまれに感じなくなる場合には、オムツ着用を拒むケースも珍しくありません。

効率的な介護を優先するのか、利用者の残存機能や回復意欲を優先するのかでも、オムツ、リハパン、布パンツの選択や、トイレやポータブルの使用は決まります。

「オムツ交換」は介護職員を続けられるかの別れ道


これから介護業界で働きたい人にとって、「オムツ交換」は不安かも知れません。

実際、こみち自身も未経験の時に「自分にできるのだろうか?」と心配でした。

介護施設を見学し、担当者と話した時も「オムツ交換って難しいですか?」と聞きたほどです。

結局は「慣れ」だと言われましたし、毎日のように介助してきて「回数をこなすしか上手になる方法はない」と思います。

もちろん、相手があることなので、「できませんでした」と途中で放置することはできません。

任されたら、最後まで完了しなければいけないというプレッシャーがあります。

どうしてもできないときはヘルプを呼べばいいと思いますし、苦い経験をしなければ上手にはなりません。

本音を言えば、新米介護職員の練習つき合ってくれる利用者の方がずっと不安なのです。

オムツ交換をマスターするには


オムツを着用する場合、サイズや体型によって着用位置は異なりますが、その人にとって心地よい場所はだいたい決まっています。

前の方が多いと、腹部ばかり圧迫されてお尻がしっかりとサポートされてばかりか、股下がモゴモゴとして不快です。

逆に後ろが多いと前方部が少なくなり、太もも周辺の隙間や、着用具合が不安定に感じます。

そこで、早く上達したいなら、オムツのウエスト部分が腰のどの辺りまでくるのかを実際に試してみることが重要です。

もちろん、オムツは体の中心に着用されるべきなので、左過ぎたり右過ぎたりしないように心がけることも大切になります。

では、そんな風にならないためには、どうすればいいのかというと、仰臥位から側臥位への対位変化になれることです。

多くの初任者または実務者研修でも、体位の変換方法を学びます。

両腕を胸に置き、膝を立てて向きを変えますが、この基本動作を理屈を含めて理解しているか否かで、オムツ交換の上達にも影響してきます。

トイレ介助で観察するポイント


トイレを使用するには、「座位」が重要です。

便座に座ったり立ったりできるのか観察しましょう。

また、尿意がどれだけ正確かによって、リハビリパンツにパットを重ねて装着するかを検討しましょう。

また、体の機能ばかりでなく、トイレでの一連の流れがわからない利用者には、手順をこと細かく紹介し、行動をサポートします。

座位が難しい場合、転倒リスクにも配慮すれば、オムツ一択になるでしょう。