「自立」ができなくなると
介護支援を考えるとき、利用者のADL(日常生活動作)を知ることがポイントになります。
その中でも、「自立」が取れるか否かは入浴支援の可否を決めるボーダーラインでしょう。
私たちが自宅で入浴する際、脱衣所まで歩いて移動し、そこで衣類を脱ぎ浴室へと入ります。
「居室」と比較しても滑りやすい「浴室」は、転倒リスクの高い場所の1つです。
それだけに利用者をしっかりとサポートすることが求められます。
しかし、家庭の浴室は介助を考えて設計されていないことも多く、介助者が1人入るにもスペースを確保し難いはずです。
つまり、それだけに利用者をしっかりとサポートできないこともあり、介護施設の利用を検討するべきでしょう。
一般的な知識として、「デイサービス」を利用することで、「入浴介助」も受けることができます。
家庭での入浴が困難になったと感じたら、利用者の転倒や介助者の事故などを避ける意味でも、「介護認定」を受けて公的な介護サービスを利用しましょう。
施設ではどんな入浴介助をしているのか?
多くの介護施設では、3つの入浴方法があります。
それらは、「一般浴」「チェアー浴」「ストレッチャー浴」になります。
「チェアー浴」と「「ストレッチャー浴」を合わせて「機械浴」とも呼びます。
まず、介護施設の浴室は、家庭の浴室に似た「一般浴」でさえ、銭湯を思わせるイメージです。
介助を左右のどちらからでも可能なように設備を設置しているので、ゆとりあるスペースが印象的でしょう。
「チェアー浴」とは、「座位」が取れる人でも入浴できる設備です。
「座位」が取れる利用者なら「車イス」を使っていることでしょう。そんな利用者が入浴する際に、脱衣所で浴室用の車イスに衣類の着脱を済ませて乗り換えます。
体は車イスに座ったままで行います。泡を流す時は、シャワーを使うことになります。
さらに、「チェアー浴」では、車イスに座ったまま専用の浴室に正面のハッチを開けて進入し、ハッチを閉じたら一気に腰から胸の辺りまでお湯が満たされます。
時間にして2分くらいで満水になるでしょう。
介護職員と雑談したり、目を閉じて入浴を味わう利用者もいます。
出る時は、チェアー浴に溜まった湯を再び排出します。こちらも時間はほとんど掛かりません。
そして、ハッチを開いて車イスに座ったままで脱衣所まで移動します。
「ストレッチャー浴」は「座位」が安定しない利用者を対象としています。
入浴方法は、「ストレッチャー(ベッドに寝るような設備)」の上に横たわり、横になった状態で頭から足先まで洗います。
浴槽に浸かる場合も、ストレッチャーが横にスライドし、専用の浴室に入浴します。
介助者は安全ロックを確認して、機械操作を行います。
家庭での入浴に比べても、安全性は高く、利用者も介助者も負担が少なくなるでしょう。
新米介護職員が入浴介助を始める
こみちの実体験をもとに紹介すると、「オムツ交換」は入職した初日から携わり、先輩からアドバイスを受けながら行いました。
1人で交換するようになったのは、入職1週間後くらいでしょうか。
一方で、入浴の介助は入職後1ヶ月くらいして。
最初は脱衣所での利用者の誘導や衣服の着脱でした。実際に体を洗い始めたのは、入職後4ヶ月くらい経ってからです。
一般浴より先に機械浴から担当したので、機械操作を覚える必要があったりして、オムツ交換を任された時よりも大変だったことを覚えています。
特に「ストレッチャー浴」は身体機能がかなり低下した利用者が使うので、「湯の温度が熱い」とか指摘してもらえません。
常に安全に注意しながら、作業する必要があります。
また、寝たきりの利用者は手足の可動域も狭いことも多く、衣類の着脱には苦労します。
しかし、オムツ交換もそうですが、入浴介助をしている時、利用者とゆったりとした時間を過ごすことができます。
慌ただしい介護業務の中では、割と話ができる時間帯なのです。
もっとも、時間内に多くの人を入浴させる場合には、浴室が一変することになります。