制度としての「介護」を理解する
皆さんは、「社会保険」という言葉をどこかで何度も耳にしたことがあるでしょう。
こみち自身もそうですが、耳に馴染んだ言葉ほど、改めて「それは何?」と深く問われると上手に説明できないものです。
そこで、簡単に「社会保険」について一緒に再確認しておきましょう。
「社会保険」は、「公的医療保険」と「公的年金」に加えて「介護保険」「雇用保険」「労災保険」の5つから成り立ちます。
「公的医療保険」は、風邪などで病院に行った時に使う保険で、「保険証をお持ちですか?」と聞かれる、割と身近な保険です。
「公的年金」は、国民年金や厚生年金などを指し、我々中高年にとっても老後の生活に大きな影響がある気になる制度でしょう。
「雇用保険」は、失業中したり、転職したりするとハローワークに行きますが、給付金を受けられるのもこの「雇用保険」によるものです。
さて、今回のテーマ「介護」制度と関係するのが「介護保険」です。
まず、誰が介護保険を利用できるのでしょうか?
それは、65歳以上の「介護認定」を受けた人です。
では、誰が保険料を支払うのでしょうか?
それは、40歳以上の中高年や国、地方自治体が、一定の割合で支払います。
つまり、中高年になれば介護制度の一員となり、医療保険を支払う際に上乗せする形で納付します。
介護保険の概略を知ると、何だか身近に感じませんか?
医療保険と介護保険の違い
医療保険と介護保険は、とても似ている制度ですが、いくつか違いもあります。
医療保険は、病気になり病院に行く時に利用する制度です。利用するのは、何も65歳以上の高齢者や我々中高年とは限りません。
子どもや若者も体調を崩せば「医療保険」を使います。
困った時に利用できるという意味では、「介護保険」も同様です。しかし、大きく異なるのは、「介護保険」は誰でもいつでもすぐに使える制度ではないということ。
「介護保険」は使うには、とても手続きが複雑です。
その1つが「介護認定」で、制度を利用したい人は、「介護レベル」を公的機関で認定してもらう必要があります。
そこで、「公的な介護制度」を知らない人にとって、「公的な介護」をどうやって利用して良いのか分からないことも多いのです。
「介護」を支援する場所
もっとも分かりやすいのは、「自宅介護」ではないでしょうか。
つまり、両親や配偶者が、歩行や立ち上がりなどに不安を覚えた時に、家族でそれをカバーすることで、それまでの生活を続けて行くスタイルです。
しかし問題もあって、介護する人に大きな負担が掛かり、心身共に疲れてしまうことが社会問題にもなっています。
こみち自身の感覚では自分で食事ができない状況になると、家族だけで支援するのは難しいでしょう。
では、そんな状況になったらどうすれば良いのかというと、1つは公的な介護支援を自宅にいながら受ける方法です。
もう1つが、介護施設と呼ばれる場所に生活基盤を移す方法です。
自宅で支援を受ける場合、訪問介護員が自宅を訪れ食事を作ってくれたり、オムツの交換や入浴などをサポートしてくれます。
支援してもらうには、あらかじめ「介護プラン」を立てる必要があり、その量や質を決めるベースが、「介護認定」でもあります。
「この人は自分でできないことが多い人だ!」と認定されれば、それだけ多くの支援を受けられますし、逆に「もっと自分でできるでしょう!」と判断されれば、認定を受けられないこともあり得ます。
一方で、「介護施設」を利用する場合ですが、介護施設と言ってもどこも同じ支援を行なっているわけではありません。
施設の設置目的が決められているからです。
中高年の方が介護職員として働くうえで知って欲しい介護施設は、全部で5種類あります。
それが、「有料老人ホーム(通称:有料)」「特別養護老人ホーム(通称:特養)」「老人介護保険施設(通称:老健)」「グループホーム」「サービス付き高齢者住宅(通称:サ高住)」になります。
それの簡単な解説をすると、「有料老人ホーム」と「特別養護老人ホーム」は「終の住処」とも呼ばれる施設で、入居者はそこに住民票まで移してしまうほど、生活そのものを委ねています。
両者の違いは利用料金で、「有料老人ホーム」はそれぞれの利用者に合わせたサービスが特徴で、「特別養護老人ホーム」はお手頃な価格が魅力です。
そこで、「特別養護老人ホーム」については、申し込んでも数年待ちということも珍しくありません。
これから介護施設で働くことを考えると、「有料老人ホーム」では上質な介護サービスが求めれるでしょう。
介護技術にとどまらず、利用者との会話や身だしなみについても厳格な規律が考えられます。
言うなれば、三つ星ホテルのホテルマンを想像してもいいでしょう。
一方の特別養護老人ホームでは、利用者も幅広い人たちなので、特別な料金で入居している人もいます。
特別な料金で利用するのは、十分な収入がない人や、家族からの経済的な支援が望めない人です。
誤解を恐れずに言えば、安全に配慮しながら過不足ない支援で十分だという利用者が集まるのも特別養護老人ホームでしょう。
「有料老人ホーム」が格式を求めるホテルなら、「特別養護老人ホーム」は家庭的な温もりでもてなす民宿です。
それぞれの施設で、求められる介護員のイメージは異なります。
例えば「サービス付き高齢者住宅」は、「有料老人ホーム」や「特別養護老人ホーム」が持ち家なら、賃貸マンションやアパートのようなイメージです。
持ち家である有料老人ホームなどに比べて、入居が楽な一方で、身体の状態によっては退所しなければいけないなど、老後の生活の一時期を過ごすイメージです。
「サービス付き高齢者住宅」で働く介護職員は、介護支援だけでなく、管理人と言ったイメージもできるでしょう。
認知機能が低下すると、認知症と呼ばれることもあります。身体に問題がなくても、生活を上手く送れないのが特徴です。
お金の計算ができないなど、1人で暮らすには心もとない人たちです。
そんな人たちを積極的に支援するのが、「グループホーム」と呼ばれる施設です。
家庭的な場所で、顔なじみの介護職員が少人数制で利用者を支援します。
利用者も不安がないので、穏やかに暮らすことができる場所です。
そんな施設なので、一緒に料理や掃除など、家事を共にすることも多く、介護職員には家族の一員のような親しみやすさも求められます。
最後は「老人介護保険施設」ですが、こみちが働いているのもこの施設です。
病院での治療を終えても、すぐに自宅生活に戻ることが難しい人を一時的に預かって支援するのが「介護老人保険施設」です。
よく、「老健は3カ月しか居られない!」と誤解されていますが、施設の性質上、自宅への復帰を促すので3カ月ごとに心身状態を確認するという意味です。
実際、4年を超える利用者も少なくありません。ただ、病院という医療施設との関係も強く、医師や看護師が施設にいるのも「老健」の特徴と言えるでしょう。
老健で求められる介護職員は、医療現場と介護現場の連携を経験してみたい人です。
施設内の看護師は、優しくも厳しいキーパーソンで、意欲的な介護職員なら多くの経験ができる一方で、そのプレッシャーもかなりのものです。
こみちの場合はどうだったのか?
こみちの場合、実務者研修を受講している時に「利用者の服薬ってどうするのだろう?」「リハビリは誰がどんな風にするのだろう?」と言った疑問を感じていて、幅広い介護を経験するなら「老健だ!」と思ったのです。
例えば、ストーマや経管栄養などは教科書でも軽く触れる程度でした。
実際にどんな風に行われているのか、これまで見たことがなかったので知りたかったのもあります。
また、利用者の容態が急変し、心肺停止や心臓マッサージ、救急搬送という事態も老健ならではの貴重な経験でしょう。
ある意味で、人を介護するという介護職員は、なんでも「知らないよりも知っていた方がいい」ので、こみちの場合は「これしかできない」という介護職員では不安を払拭できなかったのです。
高齢者ならなれば、それだけ体調を崩しやすく、場合によっては生死に関わる事態にも繋がります。
こみちも何人かの利用者の看取りに出くわしましたし、「人の最期」がどれだけ重いのかも利用者家族の姿を見て、さらに強く感じたのも一度や二度ではありません。
中高年の方に介護の仕事はオススメですが、決して簡単な仕事ではなく、だからこそ長く続けられるやりがいもあります。
多くの方に「介護」を知ってもらい、介護職員として活躍してもらえたらと思っています。