加齢による変化
加齢により、前方の上部の視界が狭くなる「視野狭窄」が起こることで、信号の見落としなど高齢者の特徴的な交通事故も発生しやすくなります。
また、夜間時の知覚も鈍りやすく、光の刺激を強く受けた後などは、転倒、衝突の危険にも注意しなければいけません。
聴力に関しては、高音域から聞き取りにくくなり、中音、低音へと広がっていきます。
50代を過ぎたあたりからは、老人性難聴が始まり、男性の方が多いとも考えられています。
一般的、選択的知覚と言って、聞きたい音だけを意図的に聞き取ることができるのですが、年齢を重ねるに従い、その機能も低下してくると、全ての音が騒音となって感じられます。
そこで、介護士として話しかける際には、ゆっくりと明瞭な声で聞き取りやすくなる工夫も必要です。
嗅覚の低下は、一般的加齢による影響が緩やかです。
とは言え、60代を過ぎたあたりから段々と機能低下が起こり始めます。
味覚といえば、食べ物の味を感じる機能ですが、甘味、塩味、酸味、苦味に分けることができます。
それを感じる機能は舌にある「味蕾」と呼ばれる部分です。
もともと、高齢者は唾液の分泌量が低下しやすく、義歯にっても口腔内が乾燥しやすいので、咀嚼にも影響を与えます。
これは触覚にも言えることですが、加齢によって刺激に対する反応が鈍化しやすく、味覚では味付けが濃くなるなどの傾向も鈍化が原因と言えるでしょう。
発達を理解する
エリクソンの発達段階が有名です。
乳児、幼児期初期、遊戯期、学童期、青年期、前成人期、成人期、老年期の8段階となります。
高齢者暮らしでは、社会的に「孤立」しやすく、また自身も「孤独」を感じやすいことも特徴でしょう。
発達段階も終盤に差し掛かると、「老性自覚」と呼ばれる自ら老いを自覚する状況がめぐってきます。
それは、身体的、精神的、社会的な要素から感じられるものですが、その前段階をさらに「老性兆候」と呼んだりもします。
高齢期に入ると、半数以上の人が病院に通っていて、経済的、精神的な不安要素ともなります。
65歳以上の住人がいる世帯は約4割で、内3割が夫婦のみ、2割が単身世帯といわれます。
精神的にも経済的にも厳しい状況にあると言えるでしょう。
また、活動範囲が狭まることもあり、引きこもりなりやすいのも特徴です。
高齢者の生活機能を評価する代表的なものとして「ロートン」の提唱する考え方が有名でしょう。
彼は、「生命の維持」「機能的な健康」「知覚、認知」「身体的自立」「手段的自立」「状況対応」「社会的役割」を軸とした評価機能を生み出しました。
サクセスフル・エイジングを目指して
サクセスフル・エイジングとは、高齢者になった時にどれだけ幸福な老いを満たすのかということ。
そのためには、肉体的、精神的、経済的、社会的に満たされることが必要です。
しかしながら、全ての人がその条件を目指すことも困難でしょう。
つまり、理想としてではなく、現実的なサクセスフル・エイジングを考えるべきでもあるのです。
ハヴィガーストらは「活動理論」を導き出し、老いてからも現役時代同様に社会的な活動量を維持することが必要だと訴えました。
とは言え、健康でなければ働くこともできませんから、社会的な充実とは結局のところ四つの条件で優先項目を示したものの、どれかを外しているとは言えないでしょう。
その後、カミングらによって提唱されたのが「離脱理論」です。
そこでは、老後は現役時代よりも社会的に経済的に活動量は抑えられるものとし、肉体的精神的に満たされることが大切だと訴えました。
その考え方を尊重するなら、社会保障の充実やリタイヤ後の経済的不安を解消する策を行政や個人が準備しなければいけません。
さらに、ニューガーデンらは「連続性理論」を掲げ、四つのいずれかに順番を付けるのではなく、現役世代からの老後という部分に着目し、各個人がこれまでの生き方を維持できることに価値を見出そうとしました。
また、ロートンは、幸福感を主観的なものとし、「主観的幸福感」を示します。
物事に対し楽天的であることやポジションな思考、現実を肯定的に受け入れることなどを示し、自身の感じる幸福感を損なわないことがポイントだと訴えました。
最期を迎える覚悟
ニューマンらは、エリクソンの提唱した「成長の8段階」をベースに、それぞれの段階で始まるものでし、8段階の1つ「成年期」での成熟度合いによって、人生の最期もまた受け止めることができると考えます。
キューブラー・ロスは、「死の受容」として最期を迎える覚悟を示しました。
「否認」「怒り」「取引」「抑うつ」「受容」の5段階を掲げ、これらの行程を行き来しながらも段々と受容へと向かうとしています。