介護現場で「自立支援」を実現するには?

 「自立支援」とは何か?

普通、人はものぐさになります。

手を伸ばした所に使う物を置き、ほとんど移動しなくても済んでしまうようにしてしまうのです。

介護を必要とするまでは、そんな生活も取り立てて指摘されることはないでしょう。

というのも、それが「その人のライフスタイル」だからです。

一方で介護支援が必要になると「自立支援」という考え方に変わります。

なぜなら、介護スタッフが全面的にサポートし過ぎると、利用者のADL、つまり生活力が確実に低下するからです。

具体的には歩けなくなり、立てなくなり、会話も成立しなくなっていきます。

そうなるとトイレ誘導が困難と判断され、オムツを着用します。

定期的に交換し、その度に清潔を保持しますが、本人としても気分が良いものではないでしょう。

会話が成立しなくなるとテレビも見なくなります。

歌を聴いたり、口ずさんだりはできますが、ドラマを見入ることはありません。

それだけ状況判断に乏しくなり、目の前ことにしか関心を持てなくなってしまいます。

驚くかも知れませんが、車イス生活が始まって、表情や態度が一変するまで半年も掛からないケースも珍しくありません。

つまり、介護施設に入所したら、その一年後にはすっかりと変わってしまったということも珍しくないのです。

それほど人は変化してしまいますし、「自立支援」が大切になってきます。

具体的に「自立支援」で何をすれば良いのでしょうか。

利用者本人には「今までしていたことを継続してもらう」。

スタッフは「それを急かさずに見守る」ことです。

しかし、介護現場の仕事は本当に細々とあって、時間に追われながら黙々とこなしていかないと終わりません。

そんな状況でも利用者がコップを倒してしまったり、行ったはずのトイレにまた行きたいと言い出したり、何かといろんな用事が増えてしまいます。

感覚的には、通常の作業スピードを「1」だとしたら、「3」くらいのハイスピードで30分くらいはダッシュしないと予定通りに戻って来れない時があります。

そんな中で「自立支援」のために利用者が終わるまで待つというのは、簡単なようで簡単ではありません。

なぜなら、スタッフがすべてを手助けする方が短時間で終わるからです。

しかし、予定をこなすために手を出し過ぎてしまうと、利用者のADLは確実に低下しますし、遅かれ早かれ「寝たきり」状態に近づきます。

感覚的にはADLも段々と低下していくのではなく、波のような軌跡をたどりながら下降していく感じです。

つまり、最近出来なくなったことがまたできるようになり、それを喜んでいたらいきなりグッと低下するという感じでしょうか。

中には低下した時に意識を失って、救命処置が行われたり、提携する病院へと緊急搬送されたりも起こり得ます。

その後、しばらくして再入所される方もいますし、その後の再入所もないままになってしまうこともあります。

会話こそ大切

自立支援の中でも、利用者との「会話」がとても大切です。

話題など何でもよくて、何よりも利用者と向き合う時間が必要です。

自宅で生活している高齢者世帯でも、地域住民が「おはようございます」と声掛けすることが大切で、それが刺激となり「自立支援」を促す結果となります。

介護現場では、「美味しいですか?」とか、「お茶でも飲みますか?」、「良い天気ですね!」など、たわいの無い話でもいいので、時間の許す限り利用者との接点を保持しましょう。

少し遠い距離なら、笑顔で手を振るだけでも利用者の刺激につながります。

その気配りをするかしないかで、介護現場の雰囲気は全く異なります。