「不公平」を感じる介護士のホンネ

 介護の仕事は異業種とは違う!?

こみちは中高年になってから、「介護業界」に転職しました。

それまで、介護に関わる仕事をしたいと考えたことはありませんし、自分に「お世話」できる資質もあると思っていませんでした。

結果的に、縁あって介護業界に入り、介護施設でスタッフとして日々、高齢者の生活支援に関わっています。

そして、介護の仕事は他人の身の回りを世話するだけではなく、異業種ではちょっと「異質」な部分も見え隠れします。

まるごと任されることは少ない!?

例えば、こみちは広告制作の仕事をしていました。

簡単に説明すれば、依頼者に会うところから仕事が始まります。

そして、「どんな物を作りたいのか?」を話し合いの中で見つけ出し、スキルや経験、社内外の知り合いからの力も駆使して、依頼者の理想形を形にします。

言い換えれば、「これくらいでいいだろう!」というような自己判断はあり得ません。

「なぜ、そうしたのか?」を、言葉を使って説明するのも大切な仕事です。

一方で、介護施設での仕事は、本当に多岐に渡ります。

オムツ交換した直後に、別の利用者の飲み物を準備し、振り返って事務作業の書類作成やコピーをすることもあります。

つまり、介護の仕事は「なんでもする」が基本で、勤務中に3分として止まっていることはないでしょう。

しかし、介護施設の仕事は多岐にわたるものの、全てのスタッフが同じように働いている訳ではありません。

例えば、1から10まで、10項目の仕事があったとして、全てを担当できる人が一人前のスタッフだとしたら、1と2と3だけとか、1から8までとか、スタッフによって担当できる業務に違いがあります。

ポイントは、比較的担当できる人が少ない「10」の仕事ができる人は、いつも担当することになります。

そして、ここからが問題なのですが、「10」はその人に決まりとして、残り1から9までを他のスタッフがするとも言えません。

なぜなら、シフトによっては1から3までしかできないスタッフばかりなら、4から10までその人が担うしかないからです。

1から10の仕事とは?

「胸が苦しいので、今すぐ家に帰りたい!」と深刻な表情で訴えた利用者がいたとします。

「すいません。帰りたいそうです!」と話を利用者から聞いて、伝言しに来たスタッフがいました。

当然ですが、利用者を自宅に帰すことはできません。

となれば、精神的に不安になった利用者にどう寄り添えば良いのかが介護士の「仕事」です。

誰の話も聞き入れない状況で、混乱気味の利用者に、まずはどう接すれば落ち着いてもらえるでしょうか。

言い換えれば、「落ち着いてもらう」という仕事は、1から10のどれにも該当せず、作業テクニックとして考えてしまうと、何年経っても思うように落ち着かせることができないでしょう。

しかし、できないからしないを続けると、「できる」又は「完全ではないけれどできそう」な人がいつも担当するしかありません。

上手く食べることができない利用者に手助けする場合も同じです。

苦手のままでは、介護施設で仕事は広がりません。

それでも勤務時間は過ぎますし、介護士として働けていることになるでしょう。

では、利用者に寄り添い、食事の手助けをして、体操や事務作業まで担当するしかない人は、どうすれば良いでしょうか。

のんびりと慌てることもなく、「できる仕事だけ」をマイペースでこなすスタッフを横目に、しなければいけない仕事が山のようにあって、いつもフルパワーで仕事をしている介護士がいたら、「不公平」を感じないでしょうか。

「できないふり」「気づかないふり」をする!?

面倒な仕事を残してしまえば、夕方から夜、深夜に掛けてスタッフの人数が少なくなるので、大変さは増大します。

「できないのだから仕方ない!」と思うのか、「できるように頑張る!」と思うのかは、異業種では見られない感覚でしょう。

なぜなら、異業種では仕事を部分的にしか担当できないと、「報酬額」に差が生じ、又は業界から去るしかないことも珍しくありません。

そうなりたくないからこそ、スキルや経験を積み、いい仕事をしたいと頑張るのです。

しかしながら、介護業界の仕事は、「誰がどこまで担う」が明確ではなく、こずるく立ち回ればいくらでも楽をできます。

もちろん、そんな働き方をすれば、別のスタッフにバレますが、いろんなしがらみがあって非難されることはほとんどありません。

少なくとも、それがまかり通る施設は良い職場ではないでしょう。

未経験から業界入りするなら、そんな施設を選ぶべきではなく、施設全体で「実現させたい介護」が明示されている方が働きやすいはずです。

経験の浅いスタッフの数少ない「できること」でも、それが低品質だとしたら、気づいた別のスタッフは我慢して「してもらう」べきか、「もっと簡単な仕事」だけにするのか難しい判断を迫られます。

努力してくれないスタッフは、いつまでもできるようになりません。

でも、それでも任せないと、全部自分でするしかなくなります。

職場や仕事に誇りを持とうにも、「不公平感」が日常化して、次第にヤル気も失われます。

介護業界としても早急に改善したいポイントですが、スタッフのスキルや経験があまりに違い過ぎて、簡単に埋められないのも現実です。

何より、「介護」の役割や価値というのが曖昧で、スタッフの仕事を「1から10」のように明示することすらできません。

奥が深い仕事と言われる理由の一つでしょう。