介護施設の運営から見た「介護士」の役割

 現役介護士だから思う「施設運営」

はっきりと言ってしまえば、利用者の身体機能は回復できます。

ただ、自宅復帰となると、本人だけでなく周囲の協力や環境整備も必要なので、本人だけで判断することはできません。

介護士としては残念ですが、それぞれの家庭事情もあって施設に入所されている利用者も少なくないからです。

今回は、利用者とその家族のことではなく、介護施設と介護士の関係を気になることを提案したいと考えています。

まず、施設運営が大変な時期にさし掛かっていて、利用者から支持される施設でなければ生き残れません。

現状の介護保険制度を考えると、「売り上げ」自体を増やすことは難しく、コスト削減と効率的運営が欠かせないでしょう。

現役介護士が思う「もどかしさ」

利用者のADLは介護方法によって大きく異なります。

特に寄り添い方で、利用者の精神的な安定度は違います。

実際、利用者の笑顔の有る無しは誰の目にも明らかで、雰囲気の良い介護現場は利用者が明るいです。

もちろん、利用者同士で笑顔が生まれることもありますが、その割合に比べると介護士との間で生まれる笑顔の方が多いはずです。

しかし、実際に現場で働いてみると、利用者と触れ合えるのはトイレ誘導や入浴介助の時などで、用もなく利用者の隣で話す時間はなかなか取れません。

一方で、入職したての新人は、何かと担当できる仕事が限られます。

経験によって異なりますが、雑務、トイレ誘導、オムツ交換、食事介助、入浴介助と段々難しくなっていきます。

しかし、短期間でも仕事を覚える介護士ほど、仕事全体を見ていますし、任せられる仕事を増やしていきます。

一方で、できない介護士というのは、例えば初めて覚える「雑務」でさえ、一人では終えられません。

時には先輩と一緒に「雑務」をして、それが終わると先輩は他の仕事へと向かう時に、新人はすることがなくてフロアをウロウロし、利用者に話しかけて時間を過ごします。

「トイレに連れて行って欲しい!」

そんな要望が出ると、先輩を呼び「トイレだそうです!」と仕事を振ります。

しかし、それでは利用者のケアも効果が出ないでしょうし、先輩たちは新人に使われているのと変わりません。

もともと、利用者と向き合う自由な時間が少ない介護士なのに、このような環境が定着すると日常業務としては不都合なくても、施設としては結果を残せません。

つまり、利用者から支持されない施設となってしまいます。

例えばこんな組織に変える

介護士というと、オールラウンダーが求められます。

何でもそこそこできることが大切でした。

しかし、現状を考えると、人手不足は深刻で、新しく採用される新人でもかなりの割合で仕事ができません。

つまり、既存のスタッフが楽ならず、時間の余裕も生まれません。

それは、利用者と向き合える時間を持てないということで、「こんな介護をしたい」と仕事を覚える人ほど、事務仕事が増えるという悪循環に陥ります。

そこで、通常の介護支援、レクリエーション担当、夜勤専従など、区分の方法は別ですが、担当制にすることで、介護士のやりがいやモチベーションに配慮します。

どこまで、どんな分野を担当できるかで報酬に差を設けます。

もっとも実施して欲しいのは、利用者からの評価システムでしょう。

個々の介護士を評価してもいいでしょうし、良くしてくれた介護士を一定数選ぶというのも方法です。

それは月収部分に反映されなくても、賞与やベース給に影響されるようにすれば、利用者への言葉使いなど、接遇マナーは自然と改善されるでしょう。

また、バッドマークをもらった介護士については、リーダーや所属する担当者が面談し、「近況についてリサーチ」してもいいでしょう。

施設として成果を出せる介護士ほど優遇される制度になれば、新しく入職する介護士は目標がはっきり明確ですし、向上することで給料もヤル気もアップできるのは長く続くポイントだと思うからです。

介護という仕事で、言われたことしかできないとか、言われてもできないというのはとても扱いにくいスタッフで、そんなスタッフが増えた施設はどうしても評価されない運営に陥ります。