40代50代の仕事探し 『介護士という選択』

 社会構造を揺るがすコロナ禍

想像以上に長期化するコロナ禍によって、これまでのライフスタイルを根幹から揺るがす事態が起こりました。

福島で起こった原発事故の時も、「人は何のために生きているのか?」と考えさせられたを思い出します。

介護士として働き出して、高齢になった人生の先輩方が、こみちにいろいろなことを言葉や態度で示してくれます。

「明日は勤務なの?」

「いいえ、休みです」

「良いなぁ。有意義に過ごしてください」

一見すると、単なる雑談にも聞こえますが、この会話にも高齢者の心情や立場が見え隠れします。

どんなに介護施設でサービスを尽くしたとしても、自宅での生活に優るものはありません。

何歳になっても、どんな健康状態だったとしても、全ての入所者は許されるなら「自宅復帰」を望まれています。

介護の研修を受けた時、「夕暮れ症候群」とか「認知症特有の症状」というような言い方で、日暮れにソワソワして「帰る」と訴える利用者がいることを教えられます。

実際、施設でもそんな利用者が現れ、「どうしたの?」と聞けば過去の経験や出来事を持ち出して、「帰らなければいけない物語」を話してくれます。

「それは大変ですね!」

教科書的にも「そんな必要はありません。じっと座っていてください!」などと訴えを頭ごなしに否定することはしません。

考えてもみてください。

心の中では「自宅復帰」をみんな望んでいて、でもそれが叶わない事情を理解して、施設での生活を送っているのです。

「どこまで帰るのですか? 新幹線? 飛行機?」

「梅田まで帰ります。そこからタクシーで…」

帰宅願望の強さに合わせて、荷造りから始める時もあれば、チケットを購入するからという話で一度座ってもらうという方法、もっと軽い時は「散歩でも」とすっかり暗くなった屋外を見せて、「明日にしたら?」と提案するなど、いくつかの対応を選択します。

時には、同時に「帰る!」と言い出して、「まぁまぁ、一度座ってくださいね」などと慌ただしくなることも少なくありません。

帰るか否か。

そこではなく、「誰でも住みなれた自宅に帰りたい」でも我慢して施設に身をおいています。

だからこそ、「帰れない」ということではなく、「帰れるけれど、今ではない」ことを提案するように努めるようにします。

私たちにしても、体調を崩した時には外出先から一刻も早く帰宅したいと思うでしょう。

でもそうしようとする時に、誰かが腕を掴み「帰れません!」と言うのですから、「何で? 帰る!!」と声を上げたくなるでしょう。

ここで何をお伝えしたかったかというと、介護という仕事は経験や知識が段々と不明瞭になり、でもまだ完全には消去されてはいない状況にいる高齢者の心理をどう支援するかなのだと思います。

冒頭の「有意義にお過ごし下さい」と言ってくれた利用者が、どんな気持ちでそう言ってくれたのか、こみちなりに理解しているつもりです。

介護士という仕事には、そんなやりがいを感じることもできるでしょう。

その意味では、中高年からでもしっかりとやりがいあるポジションを見つけられます。

一方、社会的地位という意味では、同業とも言える看護師や理学療法士、作業療法士と比較して、雑務も多く、目指すような介護支援に割ける時間が少ないのも事実です。

そのあたりの課題は、これからの行政の方針や介護施設の運営、スタッフのモチベーションなど、相互に連携し発展してくれることを期待しています。