なぜ、介護施設に入所を決めたのか?
中高年の方々に介護士という仕事をオススメしたいのには、それなりの理由があります。
例えば、中高年になると転職で苦労する人が増えます。
こみちも同じような経験をしていますが、20代や30代の時には言われることがなかったような言葉を面接官から言われたこともありました。
「ウチは厳しいよ!」
例えば、ある会社は社員教育に力を注いでいて、個人的な考えや判断を許さずに、会社組織の方針を優先するという意味なら、考え方ではなく、こだわっているという意図も理解できます。
しかし、「ウチは…」と言ってしまう面接官の態度は、少し危険な予兆を感じます。
というのは、「何が何をどんな風に…」という5w1hの基本を無視して、上司が感情的に指揮命令をくだす可能性を感じたからです。
「何をやっているんだ。バカヤロウ!!」
昭和の頃には一人くらいいたダメダメ上司の典型ですが、具体的な指示がなく、いつも感情的で損得勘定で動いて見えます。
そこで、「ウチは厳しいよ」ではなく、「ウチはしっかりと教育もするけど、本気で学んでくれる人が欲しいんだよ」と言うのではかなりニュアンスが異なります。
どこがどのようにミスだったのか。
その時にどんなことを確認して、対処するべきだったのか。
そんなことを考えさせてくれる会社なら、「厳しさ」に裏付けや根拠があります。
つまりは、だからこそ厳しく教えるけれど、それは自身や客を事故や危険から守るためだと知れば、より真剣に技術や知識を身につけたくなるでしょう。
何が言いたいのかと言えば、中高年からの転職を経験すると、これまで意識することがなかったことに気付く自分がいます。
特に面接官の態度を見て、いい会社だと思ったけれど、入社を諦めたと言うケースも出てくるでしょう。
というのは、中高年になると人生経験も豊富で、相手の態度やホンネが昔以上に分かるからです。
ある2人の利用者が別々の場所で言った同じこと
その二人には直接的な接点はありません。
別々の所属にいる利用者たちで、二人は顔見知りではないのです。
そんな二人に対して、別々の機会にこみちは話すことが許されました。
どちらも所属部署ではトラブルメーカーと言われていた人たちです。
しかしながら、じっくりと利用者の言葉に耳を傾けてみると、何を訴えたいのが分かってきます。
暴力行為が目立っていた人も、自身の排せつ物をいじってしまう人も、そこには理由や原因が隠されています。
そこに気づくことなく、「ダメでしょう!!」と行為だけを止めようとしても上手くいきません。
つまりは、介護士がどれだけ利用者の立場になって、訴える気持ちに近づけるかがポイントです。
20代や30代でも、寄り添い上手な介護士はいます。
でも、中高年のような視点から利用者に接することはほとんどありません。
というのは、中高年と若い世代では、利用者への認識が異なるからです。
例えば中高年にとって、70代80代の利用者は正に親世代でもあります。
自身を育ててくれた世代の大人たちが、加齢により介助を必要とする年代になったのです。
一方で、20代にとっては、利用者は祖父母にあたる年齢差でしょう。
子どもの頃に祖父母と暮らしていた人ならまだしも、介護士になって初めて自分よりも50年近く年上の人に接するのですから、「自身の行末」と言う認識よりも「単純に高齢者」と感じるはずです。
ある利用者が「もう施設の暮らしは辛い」と訴えた時、若い世代は施設のサービスや介護士の応対に問題があると考えます。
一方で、我々中高年は、施設そのものはもちろん、入所した経緯や家族との関係性、さらには利用者の将来など、もっと広範囲に目を向けて利用者と向き合うはずです。
もちろん、ある程度は学習によっても補える部分ですが、年齢を重ねたからこそ行き着く「問題点」とも言えます。
しかし、介護士として働いていると、若い介護士から「なぜ?」と聞かれることが多いのです。
その時は、こみち自身が何を見て、それを何と結びつけ、そこからどんな予想や予測を働かせて、行動に移したのかをできる限り分かりやすく説明します。
そうすることで、若い世代も中高年の立場や考え方に近づけますし、さらには利用者に対してもその本質からくみ取ることができるからです。
一方で、中高年の方々が介護士に転職した場合、もっと説明はシンプルでも、なぜそうするのかが理解できるはずですし、もしかするともっと別の考え方に行き着くかも知れません。
つまりは、それこそが「介護」であり、介護士が身につけるべきことです。
少なくとも、そんな風に利用者と接すれば、施設内の彼らも生き生きとした表情になります。
それは、利用者家族との意見の相違や、自宅復帰できない本当の理由とは別の次元になるからです。
人も誰もが幾つもの顔を持って生きています。
でも、施設に入所すると、多くの顔を封印して、「利用者」を演じることになります。
当然、精神的に苦しくなる人もいるでしょうし、行き場のない虚しさや孤独感に襲われることもあるでしょう。
それでも多くの人が、「利用者」として笑顔を浮かべてくれるのです。
そんな利用者を、何も知らない人と思うでしょうか。
そんなことはないはずです。
だからこそ、介護士は利用者の気持ちやホンネに近づき、微力でも心を癒しながら介助に務めるのです。
「いつもありがとう」と言ってくれた利用者は、介護サービスに満足して言ったとは限りません。
介護士の気持ちに寄り添いながら、労を労う優しさがあるからです。
だからこみちは、いつも「介助させてもらっている」と思うようにしています。
なぜなら、人助けをしているのは、我々ではなく、利用者たちだからです。
いずれにしても、利用者のホンネに耳を傾けて初めて気づくこともたくさんあります。
介護と言う仕事の奥深さや、難しさに気づかされます。