認知機能が低下した利用者との向き合い方

すべてが分からないのではない!


最初に断っておきますが、こみちは医師でも認知機能の研究者でもありません。

中高年から介護業界に参入し、とある介護施設で介護士と働く一人です。

しかしながら、いろいろな認知機能低下の症状を持った利用者と接する機会があり、「こんな応対では結果が出ない」と日々挑戦しています。

結果が出ないという意味は、こみちなりに考えた方法や予測が目的や目標に至らないことを指します。

具体的なケースでは、認知機能が低下すると「物忘れが酷くなる」を考えられます。

しかし、3日前のことでも覚えている時は覚えていて、「すぐに忘れてしまうのだから…」という前提で接するのは信頼を損ねる結果に繋がります。

夕暮れ症候群(夕方ごろになると帰宅願望が顕著になること)では、「外が大雨だから」とか、「お茶でも飲んでから」と、しばらくすれば忘れてしまうから何か気をそらせるような声掛けを挟めば良いというレクチャーを受けたことがありますが、それを信じ込むのは危険です。

こみちがこれまで観察したことから判断すれば、認知機能低下の利用者も物忘れをしてしまう自分に戸惑っていて、できることなら忘れていたくないと思っています。

つまり、本人として忘れたくないのに、介護士は忘れる前提で接していると、両者は歩み寄ることができません。

今日も先輩介護士のひと言で利用者が気分を損ねました。

何をどんな風に言ったのかは分かりませんが、利用者は「あの人は信用できない」と何度も繰り返していたのです。

本当に考えるべき問題はここからです。

先輩介護士は、その日、その利用者と接しませんでした。

つまり、その機嫌を損ね、何を言っても拒絶する利用者を、他の介護士が接することになるのです。

「帰りたい!」「もうココにはいたくない!」

他にもいろんなことを言っていました。

残された介護士たちは、より言葉づかいに気をつけながら、利用者と接していたのです。

こみちとしては、問題を起こした先輩介護士が、ある程度までは利用者と向き合うべきだと思います。

先輩介護士は、自身の考えを正当化するところがあって、時に利用者や後輩介護士から嫌がれているからです。

自身の考え方にプライドがあるのなら、それをしっかりと貫くべきだと思います。

もちろん、強引には押し通せないでしょう。

だからこそ、どこまで考え方を貫くべきか、本当に大切なポイントは何かを再認識できるチャンスでもあります。

上手くいかない時は逃げたり、知らん顔というのは、また同じようなやり方を繰り返します。

その度に誰かがフォローしなければいけません。

反感を買うことで、何か伝えたいものがあるというなら話も違いますが、自己流を貫くことだけなら、尻拭いも自分でするべきでしょう。

基本なのかも知れませんが…


結局のところ、「真摯に」「誠実に」という接し方がオススメです。

ポイントは介護士サイドの都合を理由にしてはいけません。

あくまでも利用者にとっての利点を考えて、「こんな状況だから、こうしませんか?」という話の進め方が良いと思います。

「帰るからタクシーを呼んでください」と言われたら

先ずは何より話を聞くところから始めます。

しかし、「話したくない」とか、「誤魔化そうとしている」と言われてしまうこともあります。

それは、これまでに何度も「ウソ」で取り繕って来たツケが回って来たからです。

少なくとも十分な信頼関係が築けていないと言えるでしょう。

「帰りたいのは分かりました。でも理由を教えてくれないとタクシーだって呼べないでしょう?」と、言葉は別としても利用者と真摯に向き合うことを目指します。

その時に、認知機能が低下した人でなくても、「そうだね!」と思うポイントを見つけることです。

実家に帰るというけれどとても遠方だったり、家族が居るというけれどそれは以前の話だったり、いずれにしても今すぐ帰ることが得策ではない「根拠」を提示しましょう。

ある意味、その「根拠」が一つでも見つかると、次回のトラブルでも対処法が考えられます。

十分に利用者と信頼関係が築ければ、「健康になって、早く帰りましょう!」と施設での生活目標にも重ねられます。

そこまでくれば、「帰りたい!」と言われても、「そんなわがままでは、家族にも怒られるでしょう!?」と利用者の後ろめたさを認識させることで、「そうか頑張ろう!」と心情を誘導できます。

ある意味、その段階まで来れば、利用者の感情にも寄り添いやすくなるでしょう。

問題は、信頼関係が築けない状況で、感情的に訴えてくる利用者に対してどう接すればいいのかということです。

オーソドックスな方法は、まずは敵ではないというところから距離を縮めていく方法でしょう。

たわいない声掛けを通じて、存在感を示しつつも、急激なアプローチは避けます。

相手が望むことをできる素早く対応することで、「この人なら話を聞いてくれそうだ」という漠然とした印象を植え付けます。

また、介護士と利用者という向き合った関係ではなく、利用者と知り合いの人として横並びになることです。

「寝たい!」と訴えた場合に、「今は寝られません!」と答えるのではなく、「寝たいですよね。私も眠くなりました」と横並び感を出します。

「ベッドまで連れて行って欲しい」とさらに踏み込まれた時に、「無理です」ではなく「許可されていないんです」とあたかも二人に対して対立する存在を出します。

その後、「〇〇時になったら」とか、「〇〇の後なら良いみたいです」と説明します。

ただ時に「〇〇時」や「〇〇の後」を忘れてしまうこともあって、「連れて行ってくれると言ったでしょう!」というある部分だけがクローズアップされてしまうこともあります。

「覚えていませんか?」

神妙な表情で、落ち着いた口調を保ちながら、抜け落ちた記憶を伝えることで、理解を促すことも有効です。

慌てて使ったウソや、「こっちも大変なの!」と介護士サイドの都合を使うと、利用者の気持ちはどんどん離れてしまいます。

繰り返しになりますが、真摯な対応や誠実な応対をベースに、相手目線を残しながら、こちらの都合で話さないことです。