バリデーションをいかに介護現場で実践して行くのか?

バリデーションとは何か?


認知機能の低下は、加齢でよく見られ症状でしょう。

実際、介護現場では程度こそ異なりますが認知機能に配慮が求められます。

初任者研修などを受講すると、「ユマニチュード」と言う言葉を知るでしょう。

この「ユマニチュード」は、フランス発祥のコミュニケーション手法で、介護士の方なら耳にしたことがあるはずです。

一方、「バリデーション」はユマニチュードよりも歴史的には古く、アメリカで誕生した手法です。

その特徴は、日本における介護でも重要視される「傾聴」と「共感」をベースに、利用者と正面から向き合います。

ここでいう「正面から向き合う」とは、相手の認知機能が低下しているからと言って、「その場限りの対応」をしないことを指します。

介護現場で利用者と接していると、今さっきの話や体験を忘れてしまっていることも少なくありません。

「ご飯、美味しかったですか?」

「まだ、食べていない!!」

そんなやり取りが、日常的にあります。

バリデーションの特徴として、相手を尊重することから始めます。

「食べたでしょ!!」と一方的に否定するのではなく、「食べていませんか?」と一度は相手の言い分を受け入れて、その後に情報を共有する行動へと移行します。

というのも、バリデーションの基本として、利用者が「話を聞いてくれる人」か否かを判断できると考えます。

つまり、上辺の対処をする介護士には心も開かないと言うわけです。

忙しい介護現場で


介護士に与えられたスケジュールは、決して軽いものではありません。

まして、同じ時間帯にシフトされたメンバーによっては、2倍も3倍も動かないと仕事が片付いていかないこともあるからです。

そんな状況で、利用者から何か訴えがあっても「お待ち下さい!!」と言うだけで、向き合うことはできません。

実際の介護現場で感じるのは、仕事の分担量に差があり過ぎることです。

少なくとも、介護士として活躍したいと思った人は、利用者との会話や笑顔を見たいと思ったでしょうし、「お待ち下さい」とその場を立ち去りたいはずはありません。

ある意味、バリデーションにしろ、ユマニチュードにしろ、利用者と向き合うには、介護士がいかに分担された仕事を短時間で終えられるかがポイントです。

バリデーションを実践するには


こみち自身、バリデーションを専門家から学んだことはありません。

しかし、ユマニチュードを研修で教えてもらった時にも、いろんなことを考え想像してきました。

実際の介護現場でも、ユマニチュードの知識や現場での経験を交えて利用者に接しています。

これは利用者に限ったことではありませんが、人は何らかの「気」を持っていて、それが周囲に人にも伝わるように感じます。

「なんとなく元気がない」

そんな様子も「気」によって感じ取れるのだと思うのです。

さらに、バリデーションでは14個のテクニックを掲げて、相手の気持ちに寄り添う工夫をしています。

その中でも特徴的なのは、「センターリング」や「リフレージング」ではないでしょうか。

他にも「ミラーリング」のような、心理学でも使われる言葉もありますが、総じて「相手の気持ちをくみ取る」ために心がけたいポイントです。

例えば「センターリング」では、聞き手である介護士の私情を抑制することが求められます。

相手の気持ちをくみ取るたいのですから、介護士の気持ちが必要とされないのは当然でしょう。

つまり、「こうでしょう!」と介護士側で話を決めつけるような行動は避けるべきなのです。

相手にできるだけ多くの言葉や仕草を促し、その様子を真似る中で、さらに相手の気持ちに近づきて「あたかも相手の心とシンクロする」ような感覚が「センターリング」の目的でしょう。

特に、利用者の中には上手に表現できない人もいます。

相手を叩いたり、引っ張ったりする行動も、意地悪だからとは限りません。

その原因や理由を探すことで、相手の行動が理解できると、介護士としても対処が容易になります。

なぜなら、原因がわかるとそれまで見えていたことがらに違和感を感じなくなり、「こう言う理由で起きている」を分かるからです。

闇雲に動き回る行動は、周囲にも不安を与えますが、その行動に何らかの裏付けがあれば、掛ける言葉も変わって来るでしょう。

「どうして動くのですか?」ではなく、「ちょっと一緒に見てみましょう!」と言う具合です。

確認できたことで安心し、一緒に行動したことでその介護士のことを認めてくれるかもしれません。

一見すると落ち着かない様子でも、見方が変われば一変することもあるのです。

ただ、現実問題として、介護士はとても多忙な職業です。

どこまで介護現場で実践できるかは今後の課題とも言えるでしょう。