95点以上が条件
こみちは自分に甘い。
そう感じることが度々あります。
例えば、あることをした時、それがある程度できたら「満足」を感じます。
点数で言えば、90点かも知れません。
苦手なことなら、80点くらいでもそれなりに納得するでしょう。
しかし、好き嫌いは別にして、「95点」以上が評価される条件だと思います。
本当なら自己評価は、「100点」でなければいけないのかも知れません。
「5点」足りないところが、こみちの自分に甘い性格だと感じます。
こみちは歌が苦手です。
子どもの頃に、音楽の先生から「歌わなくていい」と言われた時からです。
それ以来、度々「音程」を理解したくて、その時の年齢なりに努力したことがあります。
とは言え、学生時代、社会人になってからも「人前で歌は歌う」のはできませんでした。
ところが、介護士という仕事を始めて「人前で話すこと」や「歌うこと」が度々訪れます。
勤務する施設では、利用者が歌うことが好きで、フロアにあるカラオケで歌っているからです。
「こみちさん、一曲歌ってよ!」
こみちは赤面し、両手を激しく振って「歌えませんよ!」と繰り返します。
その余りに大人気ない様子を見て、「じゃあ、今度ね!」と場を仕切ってくれたのは先輩介護士でした。
実際、「次は断れない」というプレッシャーもあって、カラオケをする度に胃が痛くなったのです。
ただ、ギターを弾くようになったことで「音がズレている」という感覚を持つと、カラオケから流れてくる「歌」も以前よりよく聞くようになりました。
そして、自分の声と流れてくる音が合っていることを感じられるようにもなりました。
その時、こみちなりに感じたポイントは、正しい音を「聞くこと」と「歌うこと」です。
つまり、プロの歌をしっかり聞くことで本当に「正しい音」が分かったのです。
子どもの頃、歌が苦手だったのは「音痴」だからだと思っていました。
でもどうやらそうではなく、友だちが歌うの「音程」のズレに気づいていなかったのです。
厳密に音程が合っている人もいれば、少しズレる人もいて、こみちは全く違っていました。
本当に合っている人の歌を聞き込むことができたら、「耳」が良くなったことでしょう。
さらにいうと、「人前で話す」機会が増えたことで声帯も強くなり、大きな声ではっきりと話すことができるようになったのです。
「聞くこと」と「話す(歌う)こと」の両方ができるようになり、段々と人前で歌えるようにもなりましたし、家族からも「上手くなった!」と言われます。
これまで、何度も歌の練習をこみちなりにして来ました。
「音痴」で歌えないことが恥ずかしかったからです。
でもそれは、「サラッと歌って」上手くなりたいという理にかなったものではありません。
だからこそ、結果が得られませんでした。
80点の評価から95点以上狙うには、根本的な意識を変えないといけません。
90点くらいにも「もう一歩の壁」があるでしょう。
ただ、一度でも「95点」を超えられたら段々とその頻度は増して、やがて100点にも到達できます。
それは、土台が備わり、高得点狙える準備ができたからです。
仕事でも同じこと
職場にいる新人介護士の目つきが変わりました。
誰がどんなアドバイスをしたのか分かりません。
以前までなら「ちょっとどうかなぁ」と思ったことも、一つひとつの行動に変化が見られます。
「基礎」を構築しているのが分かりますし、いずれ実力がつき、「一気に伸びてくる」ように感じます。
その一つの原因は、ある先輩介護士からのひと言でしょう。
その介護士は、上司の前では動きのに、後輩たちの前では動かないことで知られています。
「まだ終わっていないの!」
呆れた表情で言われたことも一度や二度ではありません。
しかし、自分の時はどうかと言えば、「時間がなくて…」と言い訳します。
要するに自己評価だけが高い人なのです。
こみちあれこれと言われた時に、「あなたもできていますか?」と言うこともできたでしょう。
しかし、「すいません」と言ったのは、こみちが介護士として仕事ができるようになることを優先したからです。
仕事を覚えてしまえば、別の職場にだって移れますし、別の種類の介護施設で働くこともできます。
いつまでも「できない人」では、次の予定も立ちません。
新人介護士は、その先輩から「アレして!」「コレして!」「もう遅いんだから」と言われています。
以前、オムツ交換を担当した時に、たまたまその先輩を両サイドから行うことになりました。
こみちは絶対に「半分以上」、できるなら「3分の2」くらいこなして、「無言の圧」を先輩に見せたことがあります。
それ以来でしょうか。
もう以前のような言い方は減り、先輩からの「指導」はなくなりました。
それでも、同じ時間帯になれば、こみちが「2倍」働く必要があります。
先輩介護士は指示だけをしてほとんど動かないからです。
排せつ介助で利用者の居室にいた時、何度も同じ利用者からコールが鳴っていました。
こみちが「確認」ボタンを押してコールを消しても、また鳴ります。
作業を終えてフロアに出てみると、その先輩介護士が「見守り」をしていました。
普通、見守り中はコール対応をします。
場合によっては、側を離れられない利用者のために、動けない状況もあるでしょう。
こみちは、そんな利用者を連れてコール対応もします。
多くの介護士がそうやって人出不足を補っているからです。
ところが、動かない先輩は「見守り中」と言うのです。
ある意味で正論ですが、もしもコールをした利用者に急変があった時はどうするのでしょうか。
せめて様子を確認しなければ、重大な事態に遭遇するかもしてません。
こみちはそんな先輩介護士の非難をしたいのではありません。
先輩介護士が担当なった時は、利用者が大変ですし、他の介護士も大変なだと言うだけです。
きっと新人介護士もまた、いろんな葛藤を感じながら「成長」を選んだように思います。
目つきや行動に変化が現れたには、きっかけこそ分かりませんがいい傾向でしょう。