食事介助の疑問

すべての食材を混ぜるのは何故か?


介護現場の忙しさは、実際に経験してみないと分からない部分もあります。

何人のスタッフがいるかということだけでは、「処理能力」を見極めることはできません。

感覚的な言い方をすれば、テキパキ動けるスタッフは現場に馴染まない新人の5倍以上仕事をしているかもしれないほどです。

また、介護現場には「リーダー」がいて、そのスタッフを中心に作業が振り分けられ、処理されていきます。

言い換えれば、「リーダー」の出来不出来がすべてのスタッフの効率を決定しています。

以前の記事で、夜勤帯スタッフとなれば、どうしても仕事の効率性を優先しやすく、利用者への寄り添いが二の次になりやすいことを紹介しました。

中にはスタッフが多い日勤帯でも、同じような感覚のままで働く人もいることでしょう。

それを一番感じるのが、トイレ誘導への反応と、食事介助時の食べさせ方です。

トイレ誘導に関しては、尿意を十分に感じトイレに行きたいと訴えても、「パットがあるから大丈夫。そのままだって平気だ!」というようなやり取りを見掛けます。

確かに、立位が不安定な利用者でオムツではなくトイレを使っている場合、対応できるスタッフは全員ではありません。

場合によっては、限られたスタッフがほぼ専任される形で応対します。

数名の利用者が同じような感覚だと、1時間に数回、別の作業を中断してトイレ誘導が始まります。

その抜けた作業を別にスタッフがカバーできればいいのですが、トイレ誘導を担うと多くは2つも3つも仕事を抱え込みます。

同様に食事介助でも、利用者の様子に合わせて介助できないと、強引な介助繋がりかねません。

それがひとつの原因なのか、十分に時間をおいた後でも、利用者の体調不良と重なれば嘔吐してしまうケースがあるでしょう。

同様に、高齢者の場合には、飲み込みが悪くなるので、スタッフの感覚以上にペースを保つことが求めれます。

隣の食事介助が終わりそうだと知って、ペースを上げるような意識は厳禁です。

最近、ご飯やオカズなどをすべて1つにまとめてから食べさせるスタッフが気になります。

効率性をいう観点からだとは思うのですが、もしも自分自身が介助される側になって、同じようなことをされた時にどう感じるのでしょう。

こみちの場合、利用者の要望がない限りミキサー食でも先に混ぜるような方法は取りません。

というのも、利用者との食事では、「ご飯ですよ」とか、「煮魚、美味しいですか?」という声掛けがするからです。

「次はお味噌汁にしようか?」

そんなやり取りとしていると、体調によっては利用者が食べたいものに手を伸ばそうとしたり、目線が動いたりします。

「ごめんね。ご飯だったね!」

やり取りをしていると、やがて満腹感を覚えた利用者が、口を開けなくなってきます。

「もうお腹いっぱいですか? もう一口食べられる?」

もちろん利用者の様子にもよりますが、首を振るなど意識表示してくれることがあります。

すべてのケースでそれができないにしても、できるケースがある以上は食事介助で利用者の意思を無視するべきではありません。

「ハイ、食べて! 時間がないの!!」

そんな食事は苦痛でしかないからです。

ただ、人手不足というか、仕事を任せられるスタッフが揃わないと、仕事をこなすことが最優先され、他のスタッフのカバーをしながら慌ただしく食事を終えなければいけない現実もあります。

施設サイドとすれば、スタッフの育成や人材を確保する必要があるでしょう。

広い意味では、食事中の対話も寄り添いや傾聴に入ると言えますが、利用者にどれだけ関心を持てるかがポイントで、簡単なようで「介護支援」は奥深い仕事だと感じます。

言うなれば、その人と一緒に遊園地やデパートに出掛けるようなもので、気の合う人となら楽しいですが、気の合わない相手だと気疲れもします。

利用者の多くは介護士を見て拒絶反応を示しませんが、それでも内心はこのスタッフの方が良かったなぁと思うことはあるでしょう。

こみちとしては、着衣の着せ方が100点満点の人と、98点の人で大きな差があるとは思いません。

それ以上に、そのスタッフの対応に安心できたかがポイントです。

機械のように無機質に、「次はコレ!」と淡々と言われてしまうと利用者だって嬉しいはずはありません。

その意味では、80点でも変わらないかもしれません。

ただ感覚的な話をすれば、トイレ誘導した時に肌着がめくれたまま着せられていたり、スボンが左右どちらかに偏ったまま履かせられていたり、ちょっとこれはないのではと思うような介助もあります。

衣類を心地よく着てもらうという感覚は、寄り添いの質を向上させたいと思うようになると自然に気づいてくるポイントです。

つまり、1つのことがしっかりできるようになった介護士は、いずれ他の作業も上手になります。

しかし、声掛けなどが苦手なスタッフは、利用者との距離感を保つのも苦手だと思うので、相手が本当はどうして欲しいのかもサインも見逃してしまうでしょう。