なぜ、理想を語るのか?
「介護」には、さまざまな視点があります。
一つはビジネスとしての介護。もう一つは、高齢者支援としての介護。さらに、我々中高年が働く上での介護です。
単純に、楽で高収入なら、多くの希望者が集まるでしょう。
そうなれば、介護業界の人材不足も一気に解消するはずです。
しかし、実際にはそれほど問題は簡単ではありません。
報酬を上げるということだけで、介護業界は改善されないのです。
理想の介護施設を考える目的
介護だけではありませんが、さまざまな要因が重なったことで、できてしまった習慣が未だに続いていることがあります。
例えば、介護職のイメージですが、「誰にでもできる」とか「中高年に向いている」というような評判は少し誤解が含まれているように感じます。
もちろん、介護職と言うと「低賃金」というイメージもあるでしょう。
それらを一度、横に置いて、改めて「介護施設」を考えると新しく何かが見えてくるように思うのです。
先ず考えなければいけないこととして、高齢者の暮らしをどう支援していくのかです。
近年では結婚しても子どもに恵まれないなど、自身の老後を支えてくれる家族がいないケースもあるでしょう。
そうなれば、社会としてどう支援していくべきかは、避けられない問題です。
同時に、健康的な生活を長く営んでもらえる「介護予防策」も重要になります。
社会的な事情から、独居の高齢者が自身で生活できなくなった場合、現状では訪問介護やデイサービスを活用して、不足するマンパワーを補う対策が取られています。
また、その頻度や質が高くなれば、自宅から介護施設に住処を移し、より介護支援が受けやすい環境も整えなくてはいけません。
そこで、「自宅復帰」というキーワードがポイントになって来ます。
ある意味で、自宅での生活に戻れる可能性があるなら、それに見合った介護支援を提供できる施設が必要です。
一方で、すでに心身的に可能性が期待できないと判断されれば、施設での余生をより快適に過ごせる支援が課題となるはずです。
介護職の立ち位置
大きく分けると、「自宅復帰」を目指した介護と、「余生を過ごすための介護」になります。
介護職はその最前線で高齢者を支援していくことに変わりはありません。
一方で、「自宅復帰」を目指した介護が必要な利用者には、その専門職である理学療法士や作業療法士と連携し、介護士もまた日々の生活の中で運動機能の向上に貢献した介護を心がけることが重要です。
余生を快適に過ごすための介護を支援するからと言って、怠惰な暮らしが理想となる訳ではありません。
そこにも社会性や人々との触れ合いから感じられる幸福感をどう共有できるかがポイントだからです。
その意味では、予算を掛けずとも、介護士たちの工夫やアイデアで、利用者たちが満足感を得られる暮らし作りにどう関われるかに掛かっています。
現在の施設では、四季や誕生会など、時の移ろいを感じるイベントをはじめとした催しが行われ、変化の少ない施設での生活に潤いを与える工夫も施されます。
また、日々の食事でも、空腹を満たすだけの食事から、旬や色合い、地域性など、調理師との連携を密にすることで、目でも楽しめるような工夫もできるでしょう。
介護技術を見直す
新米介護士にとって、ベッドから車いすへの移乗でも不安があります。
細身の女性でも、力づくで乗り移らせようとすれば、若い男性でも根をあげてしまうのではないでしょうか。
何より、1勤務中に何度も移乗を行うので、介護士に多い腰痛になってしまうかも知れません。
初任者研修などを受講すると、「ボディメカニクス」と呼ばれる身体構造に則した支援を学びます。
支持基底面を広く取るなど、8つのポイントからなる大原則です。
しかしながら介護現場でそのまま活かすことはできません。
なぜなら、利用者の中には身体的に制約があり、教えられた通りには事が運ばないからです。
その意味では、研修で学んだことを実際の介護現場でどう活かしていけばいいのかをつなぎ合わせる「新人研修」が欠かせないでしょう。
介護士が100%を担うのではなく、利用者とのコミュニケーションの中で支援方法が決まっていき、そこには「自宅復帰」のための介助なのか、「余生を快適に過ごす」ための介護なのかも意識しておかなければいけません。
なぜなら、依存心が強い利用者は、すべてを介護士求めてきます。
だからといって、何もかもを代行してしまうと、以前はできたこともできなくなるおそれがあります。
「自宅復帰」や「余生を快適に」というキーワードからしても、避けたい支援方法だと言えるでしょう。
パーツで考えるよりもトータルで考えるべき
駆け足でしたが、理想の介護施設とは何かを考えて来ました。
まだまだ考えるポイントはあるのですが、あるポイントだけを見直す前に、全体像をきちんと描いてみることが大切です。
その意味でも、「理想の介護施設」とはどんな施設なのかを振り返ることができれば、我々中高年介護士のやりがいも高まるでしょう。
少なくとも、介護の仕事は誰でもできる訳ではありません。
「介護とは何か?」に興味を持ち、社会や地域、個々の家庭で介護することの大変さと支援方法を共有したり連携したりする中で、「介護の仕事」が決まってくるからです。
ただ利用者のオムツを換えれば良いのではなく、食べされれば良いのでもないことに気づく必要があるのです。
その意味で、国や自治体、介護施設など、我々が介護士として働く環境をどう整えていくべきかをしっかり議論されなければいけません。
もしも、新人介護士として現場に出たなら、何のために行われている介助なのかを施設サイドが伝える必要があるでしょう。
もちろん、事細かく伝える時間は無いにしても、「介護士はキツくてつらい仕事」ではなく、「利用者の自宅復帰や余生を快適に過ごすために支援する仕事」だと認識できれば、仕事の見え方もやりがいも違ってくるはずです。