40代を過ぎた人の転職は
中高年の転職は二極化が進んでいます。
これまでのキャリアをフル活用して、やりがいに満ちた仕事に出会える人。
反対に、これまでのキャリアとは無縁の仕事に就き、年下の上司から指示を受けながら忙しなく動き回る人。
実は、二極化と言いながらも、両者はそれほど異なることはありません。
むしろ、中高年にとっての転職は、仮に従業員として採用されたとしても、自分もいっしょになって会社と成長することが求められます。
配属先のメンバーにはもちろん、総務や事務課、それ以外の部署にいる人とも積極的に親しくなっておきましょう。
なぜなら、若手の新人社員とは異なり、中高年の転職組みは「即戦力」が求められるからです。
「即戦力」と聞くと、これまでの経験を活かしたスキルを連想するかも知れませんが、実はそれだけではなく、会社の弱さにも目を向けなかればいけません。
社内の人と積極的にコミュニケーションを取ることで、工夫やアレンジ、改善できることが見つかるはずです。
長く社内に居る人にとっては当たり前になってしまうことも、別の会社を経験した中高年なら気付くかも知れません。
つまり、中高年の転職では、目に見えるようなスキルばかりでなく、見過ごされるような「気づき」も含まれます。
「その仕事、大変じゃないの? 何かこだわりでもあるの? 自分なら…だけどね!」
何気なく出た話に聞こえますが、この「気づき」は「一般的なビジネス書」や「資格取得」ではカバーできません。
その「気づき」なんて知っている人には当然のことで、知らない人には思いもつかなかったりするのです。
正社員じゃなくてもイイ!?
例えば、パートタイマーで働く場合でも、「すべてを受け身」になる必要はありません。
だからといって、口やかましく、知ったか振りの面倒な人でもいけません。
大切なのは、会社に対して「トス」をあげられる人になることです。
「スパイク」するのは会社であり、意思決定権のある経営陣でいいのです。
それでもちょっとした提案をしてくれる人は貴重な存在で、その経験こそが自身を次のステージに連れて行ってくれます。
次のステージとは?
次のステージといっても、特別な場所があるわけではありません。
しかし、「次のステージ」に来ると、これまで見ていた景色が様変わりしていることに気づきます。
それは「働くこと」でも同じで、従来の固定概念が刷新されるからです。
これは、介護現場でも言えることなのですが、個々の介護士のスキルは誤差の範囲なのかも知れません。
しかしながら、決定的に違うのは、「ケアプラン」にどれだけ沿った支援であるかということ。
場合によっては、「ケアプラン」から見直さなければいけないケースもあるでしょう。
このことは、先に紹介した「気づき」でもあり、それぞれが当たり前に思っていることでも、実はそれ以外の答えはいくつもあって、柔軟に対応できることが欠かせません。
次のステージは、新たな世界ではなく、昨日まで見て来た景色ですが、価値観や優先順位、見方や感じ方が異なるのです。
理想を話せば、施設長を筆頭に、各現場のスタッフまで意識が統一されていれば言うことはありません。
しかし、どこかで誰かが「気づき」を無視した解釈で動き出し、それに釣られて一部が迷走します。
例えば、介護現場では何時までにどういう状況になっていなければいけないというノルマがあります。
具体例を挙げれば、午前10時には利用者がテーブルで飲み物を飲んでいることになっています。
9時の段階では、オムツ交換が必要な利用者に関しては担当者が順番に部屋を訪れます。
別の担当者は、朝食で使用した食器を洗ったり、エプロンやおしぼりを洗濯します。
また、入浴を行う担当者は、順番に利用者を浴室へ誘導しているでしょう。
午前10時を迎えるには、それぞれの担当者がしっかりと役割を果たさなければいけません。
しかし、オムツ交換の担当者が、エプロンを洗い出せばどうなるでしょうか?
一見すると大きな問題ではないように感じます。
それは、別の仕事に手を出しても自分の仕事を終えるからです。
問題なのは、別の仕事を始めたら、もともとの担当をすっかりと離れてしまう人です。
「そんな人いるの?」と思われるかも知れません。
しかし、そこまで明確な例ではないものの、自分の役割を認識せずに非効率な仕事の進め方をしてしまう人は多いのです。
次のステージというと、特別なことだったり、ハイグレードなイメージを持つかも知れません。
ところが、先ずは自分の役割を全うすることから始まるのであって、そこまでは行かないと次のステージも無い訳です。
入社したばかりの人が、会社を思うあまり、経営に口を出せば評価を下げるのは当然です。
そんな話をしているのではありません。
与えられた仕事で成果を出し、さらに飛躍する目的も兼ねて、社内の気づきを「トス」することです。
「そうか、それをするともっと仕事がスムーズになるかもね!」
と相手が判断してくれる提案が「トス」なのです。
担当業務とは別の範囲で存在感が認められると、今度は「どうしたい?」と意見を求められる立場になります。
これこそが「次のステージ」で、「働きやすさ」はもちろん、「個人ではできなかった仕事」が会社という組織でチャレンジできます。
限られたスキルしか持たない人を活用することが「次のステージ」の目的です。
なぜなら、人気のスキルも5年後はどう評価されるかは不透明です。
常にスキルを磨き続けなければ、最前線では役には立ちません。
中高年の場合、それを維持するのは大変なことです。
だからこそ、「次のステージ」に向かって自分の意識を改革しましょう。
資格取得もその意識改革のきっかけに過ぎません。
高難易度の資格が欲しいなら、それを持った人を雇い入れれば良いのです。
会社の吸収合併と同じ発想ですが、個人がすべてを手に入れる必要性は少なく、「次のステージ」へと向かう意識が重要なのです。