介護士の未来はどこへ行こうとしているのか?
これまでにも、中高年の方々に介護士への転職を勧めてきました。
繰り返しにはなりますが、介護業界はこれまでの職歴や、年齢不問を掲げているケースも少なくありません。
もちろん、誰にでも簡単にできる仕事ではありませんが、転職先を求める中高年にとって注目して欲しい業界です。
介護業界は2000年以降改革を続けていて、キャリアパスを後押ししています。
キャリアパスとは、簡単に言ってしまえば介護業界で働く人の経歴書のような存在。
介護未経験者なら、初任研修や実務者研修を受けて、介護の基本を学びます。
さらに3年以上の現場経験を経て、国家資格である「介護福祉士」へと繋がります。
こみちが思うのは、中高年の転職ではこの「介護福祉士」が1つのポイントです。
国家資格であることと、3年の現場経験で介護の現状に触れられ、さまざま場面で自分の経験や知識を活用できると思うのです。
もちろんそこには、中高年にとって重要な時間的な制限も考慮してのこと。
人よりも努力することで知識や技術を向上させられる一方、介護業界は何かと「実務年数」を重視しています。
以前なら福祉系の学校を卒業すれば無試験で与えられていた「介護福祉士」の資格も、卒業後に受験が必要になり、未経験者の場合には3年の実務経験と実務者研修の受講が求められるようになりました。
中高年にとってはそれだけ年齢を重ねることになるのですから、手放しで喜べる制度改革ではありません。
介護福祉士になった後も、「介護支援専門員(ケアマネジャー)」になるには、さらに5年以上の経験が必要です。
そこまで登り詰めるだけで、最短8年。中高年の方々は何歳になるでしょうか?
実はケアマネジャーの受験資格も、かつては介護福祉士以前の勤務年数もカウントされていた時代があります。
その頃であれば、未経験者でも介護福祉士を取れば、入職から最短5年でケアマネになれたのです。
独立開業には主任ケアマネが必須に!?
経過措置を設けているものの、居宅介護支援事務所の管理者になるには「ケアマネ」ではなく「主任ケアマネ」であることが必要です。
平成29年には13万人もいたケアマネ試験の受験者ですが、翌年の30年には5万人を切っています。
さらに合格率でも20%から10%へと減少し、平成30年の合格者は全国で5000人にも届いていません。
今後も、介護施設で介護士として働きたいだけなら大きな問題ではないでしょう。
しかし、中高年の方々に介護士を勧められたのも、年齢的な制限などが少なく、これからの頑張りでキャリアパスを続けられることでした。
ところが、介護福祉士になる条件を厳格化し、ケアマネになるのも大変になって、さらに「管理者」として活躍するには「主任ケアマネ」になる必要があると言われれば躊躇もします。
本来の仕事結果ではなく、研修や書類、勤務年数など、後付け的に追加される条件は中高年にとって厳しいと言わざる得ません。
もちろん、介護はより質の高いケアが求められるとは思いますが、研修や書類をたくさん経験すれば良いとは思えませんし、「主任ケアマネ」になるにも働きながら「研修」を受ける必要があり、さらに5年ごとに更新も課せられようです。
それだけでも、中高年がこれから介護業界に転職し、将来的に「主任ケアマネ」になるメリットが見えにくいでしょう。
そうなってくると、看護士や作業療法士などの専門職を目指した方が良いように思えます。
確かに学校を卒業するまでの期間が求められますが、制度が変更される度に資格や研修に追われる介護よりもマイペースで働けるでしょう。
こみちが実務者研修を受けている時、若いクラスメートが「ケアマネ」を目指したいと語っていました。
まだ20代であれば、しっかりと経験を詰めるので今の流れに乗って行けるでしょう。
しかし、40代を過ぎて介護業界に転職を考える我々にとって、実務経験が課せられる条件は厳しさ以外の何者でもありません。
主任ケアマネが必要になると、1人で居宅介護支援事務所を開設することもハードルは上がります。
将来的に独立開業という選択肢が遠のいて行くのではないでしょうか。
安くない更新費用や短くない研修時間など、これから(主任)ケアマネを目指す理由が薄れてしまいます。
資格取得という観点では、ケアマネ試験だけでなく、社会保険労務士や不動産鑑定士などの専門職も視野に入って来るでしょう。
もっとも、大卒資格が求められたりと、新たな受験資格も求められるのですが。