初めて「介護士」になったら感じるであろうこと

 介護施設に初めて行くと…

こみちがそうだったのですが、とにかく廊下が広く、ドアがたくさん並んでいると思うでしょう。

多くは利用者の使う部屋だったりするのですが、施設柄車いすでも通りやすいように、一般住宅と比べてドアそのものが大きく、しかも引き戸が多いことに気づきます。

ドアノブのある押したり引いたりして開閉するドアは、ドア付近に人や物があると開け閉めできなくなってしまいます。

それは万が一、トイレ使用中に利用者がその場にしゃがみ込んだような時に、対応できなくなる可能性があって、通常、介護施設のドアは引き戸が多くなります。

また、廊下などには手すりを設置していることから、車イスでのすれ違いに十分な横幅にプラスして手すり設置分も確保してあるので、初めて施設を訪れると「廊下が広く」と感じるでしょう。

いざ、仕事が始まると…

自宅などで「介護」を見た経験があれば、ある程度のイメージはできるかもしれません。

しかし、こみちのように全く「介護」に触れたことがなければ、仕事と言われても具体的なイメージができないでしょう。

そして、実際には利用者の名前を覚えることから始めり、勤務時間帯のタイムスケジュールに沿った業務が紹介されると、「仕事量」の多さに少し怯むかもしれません。

例えばこみちが先輩となって新しく入ったスタッフに仕事を覚えてもらうなら、とにかく一本線でも良いので、その勤務時間帯にするべき「基本形」を伝えたいと思います。

実際には、同じ時間帯に複数の仕事があって、例えばスイッチだけ入れたら別の仕事に取り掛かるというような組み合わせが求められるのですが、慣れないうちはあまり同時進行してしまうと、作業項目があっちにこっちにと飛び回り、「もう自分にはできない!」と思われてしまうからです。

つまり、教える側にすれば、少しでも早く覚えて欲しいと言う気持ちから、「見るだけでいいから」とか、「また何度も説明するから」と前置きして、いろんな業務を見てもらおうと思う先輩もいるでしょう。

できることなら全体マップのような作業リストを事前に作成し、そのマップと比較しながら、そして必要に応じて気づいたことをメモしてもらいながら、職場を巡ると分かりやすいはずです。

こみちの場合には、午前中に教えられたことを初めての昼食時間にメモ紙を使い自分なりのタイムスケジュールを作成しました。

さらに利用者の氏名を覚えるために座席表をもらい、そこに簡単な記号でエプロンやトロミ剤の有無、トイレ誘導の可否などを書き加えて行きました。

指導してくれた先輩が入れ替わることもあって、急に説明の内容が変わってしまうことに戸惑うかもしれません。

なぜ、そんなことが起こるのかと言うと、施設が定めた公式マニュアルが無いか不足しているからです。

個人的には未経験者ほど、しっかり手順を定めたマニュアルがあった方が仕事はしやすいでしょう。

と言うのも、自己流で仕事を覚えて行くと、あるタイミングで確認したいと思うからです。

介護士の仕事を始めるなら、学生時代に接客業を経験しているといいでしょう。

お茶を配ったり、テーブルを拭いたり、そんな時に座っている利用者へ声掛けもするからです。

こみちの勤務する施設では、同じ飲み物を提供する場合でも、お茶に差し替えることは珍しくありません。

というのも、ジュースや甘酒、ココアなどの中で、利用者が好まないものもあるからです。

また、提供する際に冷たい方がいい場合や、温かい方がいいと言う場合にも対応するので、「冷たい飲み物をお持ちしました」とか、「温かいのでやけどにご注意ください」など、ひと言添えることもあります。

作業としては「お茶を配る」と書かれているだけなので、初めての時は「お茶を配ればいいのか!」と言葉通りに理解すればいいでしょう。

介護スキルとは、特別な項目ということもありますが、多くは誰もがしていることをより的確に細やかに応じられることだと考えています。

つまり、オムツ交換と言う作業も、「手順」は概ね同じです。

しかし、どこまで配慮するかは大きく異なりますし、利用者の反応もまるで違います。

ある利用者の場合、あるスタッフなら何事もなく終わるのに、別のスタッフには「今は嫌だ!」と言って布団を捲ることさえ拒絶されたりします。

仕事だからと無理に推し進めようとすると、場合によっては大声を発したり、掴みかかってくることも珍しくありません。

なぜなら、オムツ交換はとてもデリケートな行為で、見ず知らずの人に触れて欲しいものではないからです。

つまり、「スタッフの〇〇です」から、「体調はいかがですか?」「交換するので、身体に触れますがいいでしょうか?」と、信頼関係が薄い時ほど丁寧な声掛けが重要です。

直ぐに受け入れてくれる利用者もいれば、1か月くらい掛かることや、どんなに日数が経過しても「拒否」が続く場合もあります。

でもそれは仕方ないことで、誰もが自分を受け入れてくれるとは限りません。

実際、こみちの場合も、ある利用者の目薬をさすことをずっと拒否されていました。

他の行為は比較的早く許可されたのに、目薬だけは「ごめんね。他の人にお願い」と言われ続けたほどです。

しかし、今では目薬だけでなく、何かと声を掛けてくれるようになり、少し信頼される存在になれたのかもしれません。

介護の仕事はここまでできれば十分ということはありません。

しかし目安として3ヶ月から半年くらいは、初めてのことに出会う機会もあるでしょう。

その時期は、無駄に気負う必要もありませんし、できないことや分からないことをそのままにするのではなく、「これってどうすればいいのでしょうか?」と先輩に質問しましょう。

覚えた知識や技術は、この先も自分を助けてくれるので、できる風介護士になるよりも、しっかりと基本を覚えたいものです。