介護士に向いている人が優しい人とは限らない!?

 「優しい人」や「人と接することが好きな人」は介護士には向いていない!?

一般的に介護士が接客業と言うことから、人と接することや親切にすることが好きな人にむいていると言われます。

ある意味では間違えていないとも思いますが、中高年からの転職と言う視点で考えるともう一歩踏み込んだ話も必要です。

老化によって健康を失うことはイメージできるでしょう。

それによって家族の支援が必要になり、子どもたちが仕事や辞めて親の介護をするということも起こり得ます。

もちろんそれは強制される話ではありませんし、介護施設に入れて暮らしてもらうことだって選択肢の1つです。

「ウチに親をよろしくお願いします」

そう言って施設で迎える介護スタッフに頼んだ時に、どこまで親身になってケアしてくれると思いますか。

そもそもの話として、そのスタッフが介護士になった本当の理由を考えたことがあるでしょうか。

例えば、自身の私生活など顧みず、入所された利用者の世話をするために誠心誠意を込めて働く人が何割いるでしょう。

もしもそんな貴重な人がいたとしても、施設のスタッフ全員が同じ気持ちで働いているとは考え難いことです。

つまり、あるタイミングで自分の親が面倒なお願いをした時に、笑顔で話を聞いてくれると言う対応さえ、そうそうできるものではありません。

「お待ち下さい!」

時に発せられた言葉の語気が強く、聞いた利用者がどこか萎縮を感じてしまうことだって起こり得ます。

一方で介護士となった時に、どんなに順序を追って説明しても、利用者が理解を示さなかったらどうしますか。

「今はできません。あとでいきましょう!」

そこまで説明しても、「トイレ!!」と騒ぎ立てる利用者は少なからずいます。

問題なのはその騒いでいる利用者を中心に、周辺の利用者まで落ち着きを失い、なんだかおかしな雰囲気になってしまうことが起こります。

そうなってしまうと、もう一人の介護士ではどうすることもできません。

つまり、「優しい人」や「親切な人」も相手の理解があってこその話。

実は利用者自身も理解できない状況になった時こそが、介護士の仕事です。

介護士に向いている人

こみちが考える介護士に向いているのは、瞬発力があって、ポイントを掴むのが得意な人です。

優しくなくてもいいので、必要なことをしっかりと提供できる人です。

どんな場面でも「70点」を取れる人で、逆に「30点」を捨てられる人でもあります。

もちろん90点のクオリティーで回せるならそれに越したことはありません。

しかし、より高い品質だったとしても、そこに評価を得られるものではなく、あくまでも自分自身の満足やプライドを満たすものと割り切れることも大切です。

ポイントは70点の内容をどう設定するか?

介護士の仕事を良くするにも悪くするのも、勤務している施設の方針です。

ある介護士にとっての70点と、別の介護士の70点が明らかに異なっている場合、より負担が大きい介護士は「なんでいつも自分ばかりが大変なんだ?」と感じるでしょう。

と言うのも、その介護士も「30点」の部分を泣く泣く見ないようにしているからです。

もしも、別の介護士が自分と同じくらい仕事ができたら、その30点さえ賄えたと感じたでしょう。

しかし、できない状況を渋々納得し、自分なりの70点に集中したとしても、スタッフ全員の目的意識を変えたいとか、向上させられないかと思うかもしれません。

しかしながら、全ての人が介護士に憧れてその仕事を始めた訳ではないように、できることなら60点や50点でもいいと思う人だっているかもしれません。

「どうしてもっと動かないの?」

そう言いたくなる気持ちがあっても、それを言ってヤル気を出してくれるとは思えないでしょう。

「年齢も過去の経歴も問わない」と言うことは、メリットにもなりますがデメリットにもなり得ます。

いろんな目的で働く人がいて、70点を設定するのでさえ容易では無いのです。

優しい人が介護士になったら…

介護現場で面倒な仕事や成果が現れない仕事をやらされるかもしれません。

それでも利用者にいい影響があれば納得もできますが、多くはスタッフ間の話で終わります。

これは何も介護現場を非難しているのではなく、理念や理想を掲げた介護施設が、どうやってその実現に取り組むのかが問われると言いたいのです。

とても残念な話ですが、介護施設の収益性だけを考えると、あれこれと工夫できる範囲は限られています。

「自立支援に向けた介護サービスを!」

とても理想的な目標ですが、どうしても時間が掛かってしまう利用者を相手に、勤務中の介護士が待っていられる余裕はありません。

もしもあるとすれば、そのロスした時間を、介護士が物凄い手際でリカバリーできる時です。

標準時間5分の作業を1分で回すには、どれだけの技術と経験が必要になるでしょうか。

大切なのは優しくできることではなく、そのための時間を確保できる人なのです。

多くの介護士は、丁寧な口調を意識して作業するだけでも大変だと思うでしょう。

そこからさらに、相手に合わせて持ち時間を切り分けられるには、よほど深い介護への理解が求められます。

異業種なら月収50万円、70万円。年収で1000万円を超えるような知識や技術に踏み込める段階を迎えているのに、介護士だから朝も夜もお構いなしで勤務して、でも大卒初任給と変わらない金額となれば、特別な理由でもなければ続けられません。

実際、介護士として施設で働く人は、新卒で介護業界に入った人か中高年からの転職組です。

稀に仲間同士で施設を立ち上げる人もいますが、彼らは報酬ではなく理想の介護があるからでしょう。

その時も100点としての理想を追い求めると新規採用したスタッフは与えられた理想について行けなくて逃げ出してしまいます。

継続可能なライン、つまり70点くらいの介護で、どんな風に方針を定めていくのかがポイントです。

機械的でも淡々と熟る人なら、介護士の仕事を割り切って考えられるかもしれません。

思いが強いと、それだけ感情も揺さぶられるので、利用者想いな人は心を痛めてしまうこともあります。

つまり、介護士に向くか向かないかの差は、ストレスを受け流せるかどうかではないでしょうか。

その意味では、少しズルい部分もないと、できていないことにストレスが蓄積され、また利用者とその家族との折り合いが悪いと言うような現実に切なさを感じるでしょう。

できないことはできないと断ることも、介護士を続けるには大切なポイントです。