介護士を続けるのも限界なのかも…

 介護方針が曖昧な施設で起こった事例

高次脳機能障害と言う症状をご存知でしょうか。

介護士など医療や介護などに関わったことがある人なら詳しく知っていると思いますが、未経験者のために簡単な紹介をさせてもらうと、脳卒中や事故などで脳にダメージを受けたことで、それまで出来ていた動作が困難になってしまう症状です。

動作の中には、行動はもちろん、記憶力や感情まで含まれ、人によってはトイレに行ってもどうしていいのか分からないというようなことが起こります。

また、感情も含むので、第三者からは理解し難い理由で怒り出したり、それが発展すれば暴れてしまうなどの問題行動にも繋がりかねません。

高次脳機能障害を抱える利用者が、こみちの勤務している老人介護保健施設に入所されました。

老人介護保健施設と言う場所は、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどと同じ「介護施設」ですが、主たる目的が異なります。

通称、老健ともいわれ、主に病院などで治療を受けた高齢者が、入院期間を過ぎてそのままでは自宅での生活に不便が多い時に受け皿となり、リハビリなどを通じて心身機能の回復に努める所です。

その利用者は、とても歴史などにも興味があり、どことなく知的な一面を有しています。

ただ性格的に少しマイペースで自分勝手な一面もあって、介護施設でもケアには神経を使う相手でした。

しかし、だからと言って自分以外知り合いもいない施設で寝泊まりすると言う生活で、介護士からどこか事務的な接し方をされたらどんな気持ちになるでしょうか。

先ず老健としての役割は、自宅での生活が継続できる心身状態を目指すこと。

ケアプランと呼ばれる計画書でも、在宅生活に向けた取り組みが盛り込まれます。

そこには、家族による受け入れや、在宅ケアを行える環境整備も含まれるでしょう。

いつかの記事でも触れましたが、いわゆる「ケアマネ」ではそこまでを担うのは荷が重すぎます。

しかしながら、利用者自身が在宅生活を行える最低条件をクリアしていても、そこに向けた準備がなければ、施設で暮らすしかありません。

先にも触れましたが、老健は在宅復帰を目指す施設。

そもそも家族や自宅環境の原因から在宅復帰が困難な場合、特別養護老人ホームなどの方が施設の目的にも符号します。

そして、十分に在宅復帰できると心身状態になったと判断されたにも関わらず、結局は家族との折り合いからまた老健に戻ってきました。

現場リーダーとこみちの衝突!?

現場リーダーはケアマネでもあります。

つまり、受け持つ個々の利用者のケアプランを作成する業務も担っていて、それはつまり「利用者がどんな風に暮らして行くのか?」を本人や家族、また医師や機能回復訓練士などから意見を取りまとめて、計画書としてまとめます。

「老健に戻った理由は?」

少なくとも、心身機能の面では、不十分な部分も見られるものの、一度は在宅復帰が可能と判断されました。

完全復活が10だとして、5や7くらいでも不便はありつつも工夫次第で在宅生活が可能となるでしょう。

言い方を変えれば、10ではないので、生活面の一部では困難さも見られるのは仕方ないこと。

それこそ、10以外は在宅復帰を望まないと言う家族の意向なら、もう老健ではそもそも預かれる案件では無いはずです。

そんな中、現場リーダーからの方針は、こみちの介護が高次脳機能障害を助長させていると言うものでした。

つまりその言葉そのものを言われた訳ではありませんが、「利用者の言いなりになっている」それでは「利用者本人がつけあがるだけだ」と言うのです。

一方でリーダーの示す介護は、あくまで主導権は介護士にあって、スケジュールに沿って行動し、場合によっては利用者を待たせることも介護だというのです。

言葉によるニュアンスではとても表現が難しく、ともすれば誤解を招くことにもつながりかねません。

ただ、最近のスタッフの行動は、利用者に対して時に「それが介護なのか?」と感じさせる行為があります。

自由に行動できないと分かっていながら、介護士がそれを逆手に取っているのではないかと感じさせる言動が証拠は無いものの、例えば利用者から「意地悪させれた」と言うような話は耳にします。

完全に入所者の精神的なストレスを取り去ることはできませんが、ケアプランに示された目的でも無いなら、あえて苦痛を感じさせる言動を使う必要はないはずです。

その意味では、その利用者は本当に機能が回復し、晴れて在宅復帰まで漕ぎつけたと思っていました。

にも関わらず、また老健で、リハビリを行いつつ、家族から受け入れても構わない人となることを目指しています。

「待って」ができる人。「こっちでしょう!」と言ったら従う人。

例えばそんな人にならないともう自宅に帰れないとしたら、その利用者は何のために生きているのでしょうか?

ましてこの問題は利用者本人と家族で考えることで、もう少し範囲を広げるとしても、ケアマネが老健に再入所させるべきか、それとも別の施設を紹介するべきかが含まれてきます。

そんな中、現場リーダーからは「こみちはどんな介護をするつもりなの? 言われるまま、振り回されたいの?」と迫ってきました。

正直言って、以前から勤務する老健の介護力には疑問もあります。

確かに前回の入所中、その利用者をかなりの面でサポートしたのは事実です。

しかしながら、同じ時間帯になったスタッフが、別の仕事と理由をつけて、関わることを拒絶していたのも事実。

精神的にも抑えが利かずに、感情の起伏が激しい時もありました。

でも、リハビリには熱心で、在宅復帰を強く望んでいることもあって、スケジュールを空けては介護リハビリをして、随分と改善されたはずです。

「介護しないんじゃない。でも、相手に合わせるのはダメだ」

正直言って、もうどうしていいのか分かりません。

「ケアプランって何?」って感じで、今回の再入所した目的が、高次脳機能障害を抱えた利用者の性格を改善させることだとしたら…。

そのために、「指導」と言う名のサービスを取り入れて、頼まれてもすぐには応対しないことを目指す方針が理解できません。

忙しいスタッフと忙しくないスタッフがいて、それは「今するべき仕事」を意識できているかどうか。

気づかないスタッフはどこかゆったりと仕事をし、スケジュールを理解したスタッフは慌ただしく動き回る。

そして、動くスタッフに利用者から声も掛かり、さらに仕事が忙しくなってしまう。

かと言って、ゆったりとしたスタッフは、利用者とトラブルを起こし、場合によってはその仲裁に入る始末。

別に事務的な介護を否定しているつもりはありません。

ただ、心細い利用者が施設暮らしで孤独を感じ、それに耐えきれずに精神的なダメージを受けないようにして欲しいのです。

抜け殻のようになった利用者を扱いやすい利用者と呼ぶことはしたくありません。