認知機能が低下した利用者にとって
認知機能が低下した利用者は、介護施設では珍しい存在ではありません。
しかし、中には今さっきの事柄さえも覚えていなかったり、気にしていなかったりします。
そんな利用者と向き合う時、こみちが心掛けているのは「安心」を感じてもらうことです。
トイレ誘導をし、便座に腰掛けてもらった時など、利用者はいろいろと気持ちを話してくれます。
時には過去の暮らしぶりを今さっきのことのように教えてくれたりもしますが、「何をしていたら良いのか分からないの」と本音を語ったりします。
「これをしたら、あれをして」
介護士は、時間に追われているので、何かと急かしてしまいます。
「早く、早く、急いで!!」
などと声掛けすることもあるでしょう。
いろいろ試した結果、こみちが使うパターンは、この先に待っている「簡単なスケジュール」と、「大丈夫、そばにいるから」という「安心」を感じられる言葉を使うことです。
なぜなら、認知機能が低下すると、利用者は何をしているのか分からないままの時があります。
「早く、急いで!」と言われても、「なぜ?」「何を?」という疑問を抱えてさらに不安を募らせます。
介護士の中には、「声掛けしても言うことを聞いてくれない!」と苦手意識を持つこともあるでしょう。
そんな時は、利用者の立場になって、どんな気持ちなのかをイメージすることです。
「昼食を食べたので、トイレにいきましょう。歯磨きもしますよ」
と言ってあげたら、立ち上がった利用者が、何をするために歩き出したのか不安になりません。
見覚えのある自室に向かっているとしても、「理由」が分からないと、不安になるでしょう。
「大丈夫ですよ」
便座に腰掛けた利用者に、笑顔で言ってあげましょう。
「私は用を足しても良いんだ」と思うからです。
全ての不安が拭えなくても、「大丈夫」と言われたことでとりあえず先に進むことができるでしょう。
介護士は、利用者の様子を見て、彼らの気持ちを察することが必要です。
「あれこれ言われても分からないの」
「イイですよ。大丈夫だから」
洗面台の前に座った利用者が手を洗っている時にも、「現状のままで良いのだ」と伝えることで、落ち着いた様子で歯磨きなど整容を行えます。
上手くいかないケースを見ていると
「どうしますか?」
不安になり動けなくなった利用者に対して、そんな声掛けが不適切なことが分かるでしょう。
きっと、利用者は「どうしますって言われても…」と思っているはずです。
その時の声掛けが無表情で、冷たい雰囲気なら、なおさら利用者の心は乱れるでしょう。
そこから動きたくないと思ってしまうでしょうし、その後の声掛けにも耳を貸さなくなるはずです。
介護士自身が無理だと思った時は、一度その場を離れてみるのも方法です。
ゴリ押ししても良い結果にはなりません。
5分くらい時間をあけて、何もなかったように「〇〇さん、これからトイレにいきましょう!」と笑顔で伝えます。
急かすと言うニュアンスではなく「疑いなくそうすることが当たり前」と印象で、「昼食は美味しかったですか?」とすでにトイレに行く前提で誘導をします。
利用者の気持ちが「そうか行く予定だった!」となれば、自然に歩き出してくれるでしょう。
「良いですか?」「行きませんか?」と行くのか行かないのかを何度も聞くことで、逆に利用者は「どうしたら良いのだろうか?」を思い始めます。
辺りを見渡したり、信頼できる人を探し始めたら、その誘導が上手くいっていないサインです。
その意味では、介護士が自信を持って声掛けしなければいけません。
渋る利用者には、「エエッ、行かないの?」と驚くくらいの反応を示すのも誘導のテクニックです。
「お茶、飲みましたか? ではトイレに行きましょうね」と言う声掛けパターンも、行くのが自然に感じられると思いませんか。
何より、そうすることで「大丈夫」なのだと思ってもらえることが大切です。
さらに、この介護士なら信頼できるとか、安心だと感じてもらえたら、さらに誘導は容易になります。
初めて接するような場合、どうしても介護士は探りを入れてしまいますし、選択肢を含んだ声掛けを使います。
その曖昧さが利用者に不安を与え、誘導に従ってくれなくなるのです。
つまり、介護士は自信を持って安心感を与えられるように心掛ける意識がポイントなのでしょう。