方言で話始めた利用者に大興奮!

この頃、成果を実感している!?


これはある利用者の話。

加齢による機能低下が見られるものの、会話などでも自然に受け答えできた80代後半の利用者。

ある日、朝食もいつもどおり、10時からの水分補給も特に変わったところもなし。

ところが、昼食後に自室へ戻った時に体調が急変。

ナースに連絡をして、慌ただしく人工呼吸器が準備されるほどの状況に、別の場所で作業していたこみちも気になり始める。

「〇〇さん、どうしたの?」

あまり大きな声で訊ねることはできません。周囲の利用者も動揺するからです。

しかし、過去にもナース数名が個室に押し掛け蘇生処置を行う中、救急搬送となったケースもありました。

利用者たちも不思議なもので、我々介護士以上に動揺する素ぶりは感じられません。

こみちがその個室から出てくる利用者を見た時、肌はすでに紫色で、呼び掛けに応じる様子もなく、「チアノーゼ」が進んでいるという状態でした。

確か、一度退所扱いとなり、部屋から荷物もすべて運び出されました。

1週間、2週間、1ヶ月と時が流れにつれ、「〇〇さんはどうしているだろうか?」と思うことは何度もありました。

しかしながら、最後に見た時の印象が強すぎて、他の介護士に聞くことさえできません。

「〇〇さんが再入所する!!」

という話を聞いたのは、それからしばらくしてのことです。

嬉しくもありましたが、信じられないと言う気持ちもありました。

ところが、その利用者は、見た目こそ本人に間違いないのですが、表情もほとんどありませんし、受け答えもほぼできなくなっていました。

介護士の中には、過去の姿ではなく、今見ている利用者の様子に合わせた扱い方をする人もいます。

こみちの感覚はちょっと違っていました。

確かに、最近までこみちはその利用者に「ビンタ」をされたりします。

他の介護士たちは、「ダメでしょう!」とか「何をするの!!」と怒鳴ることが多かったのです。

しかしながら根拠はありませんが、こみちは「ビンタ」が嫌いではなく、何か言いたいことがある裏返しに思えたのです。

そして、今、声を発することができなかった状況を脱し、早口言葉をはじめ、会話も少しですができるようになりました。

今でも「ビンタ」をされるのですが、「パシ!」ではなく、「ポン!」とか「すりすり」とか、その時々で「ビンタ」の後が違うのです。

また別の利用者の場合。

その方は九州出身の90代の利用者。

その年代から考えると、身長もかなり高く、骨太で体格に恵まれた人です。

「オイ!」とか「お茶!!」とか、短い単語を叫ぶことはあっても、介護士の名前を誰一人として覚えていませんし、覚えるつもりもないようです。

初めてあいさつした時も、興味無さそうなのが分かりました。

ただ、先輩介護士が、その利用者何かと話し掛けていて、「ウルセー!」とか「あっちいけ!」と言われながらも笑っていたのを覚えています。

しかし、こみちはどちらというと苦手なタイプで、必要なことこそ伝えても自分から積極的に話し掛けることはありませんでした。

今、どんなきっかけから親しくなったのか思い出せません。

しかし、「オオミチ!」とか、「ここみちさん!!」とか、似ているけれどちょっと違う名前で呼ばれます。

「御用ですか?」

「何ですぐ来ないんだ!」

「すいません!!」

少しくらい言葉が分からなくても、長く接しているとだんだんと分かり部分が増えて来ます。

それは言葉そのものではなく、「意味」を感じられるようになったのです。

「背中が痒いの?」「姿勢を直しましょうか?」

そんな意図を様子や言葉の発し方から分かるようになりました。

そんな利用者が、「方言」で話し始めたのです。

しかも、以前のように短い単語ではなく、「かいか〜」みたいな言葉で表現します。

「何々? かいか?」といっしょに騒ぎながら利用者の背中に手を差し込みます。

そして、上品な言葉だけが唯一のコミュニケーションではなく、「方言」や「タメ語」さえも共感に繋がります。

そのあたりが可能になるのは、両者の信頼関係と共感したいと思う気持ちが合致した時です。