現場が求める「介護士」とは異なる!?
介護施設が求める「介護士」とは、ズバリ「現場」を回せる介護士です。
現場を回すとはどういうことでしょうか。
「担当になった仕事をこなせる」にも似ていますが、厳密には全く異なる意味です。
例えばインスタントラーメンを作るとしたら?
インスタントラーメンを作る場合、手順をあげるなら袋から麺を取り出し、沸騰したお湯の入った鍋で煮て、粉末のスープを溶かせば完成です。
つまり、介護の研修などで学ぶのが、このような内容です。
実際には、そもそもインスタントラーメンはどこにあるのか。
鍋は?お湯は?
そして、具材は追加しないのか?ラーメン鉢はないのか?
などなど、思いつくでしょう。
また、一人で作るのか、複数で作るのか、一杯だけなのかもっとたくさん作るのかでも、準備や手順が変わってきます。
ある意味、「担当をこなす」とは、事前に想定された作業内容を時間内で終了させればいいことになります。
「現場を回す」とは、状況によっては5杯だったりまた10杯に増えたり、複数で作ることもあれば、一人で頑張るしかない時も出てきます。
どんな場面になろうとも、ある意味で力技かもしれませんが、やるべきことを終えられることが「現場を回す」ことになります。
介護士の経験ではなく、社会人経験が関係する?
介護士としては高いスキルを持っていても、「現場を回す」ことができない人は一定数存在します。
そんな人の仕事には特徴があって、一往復してもこなせない「半端な作業」が苦手です。
理由は簡単で、仕事を覚えていく時に、自分が思う「限界値」を超えた担当をあまり経験してこなかったからです。
例えば、100名の技術者をあつめて、割り振りを決めて作業してもらう時に、全ての人がノーミスなら大きな問題は起こりません。
しかし、通常は何らかのミスやトラブルがあって、それが起こってからどう判断し、対処するのかがプロジェクトリーダーの役割になります。
介護現場でも、あらゆる作業を担える介護士が複数名いて、彼らが現場を動き回ってくれたら、もう何が起こったとしても回るでしょう。
しかし、実際には、すべてのことを担える介護士は限られていて、まだ成長中の人やほとんど何もできない人もいて、現場は仕事を進めます。
そんな時に、人数で仕事量を等分にしてはいけません。
なぜなら、場合によっては担当になってもできない仕事があるからです。
つまり、難易度の高い仕事ほど経験者に回し、少し時間が掛かっても大丈夫な仕事を初心者に担います。
そして、初心者には困難な状況であると伝えるよりも、担当になった仕事を確実に終えられるように頼むのです。
1つには、困難な状況だと知っても、それ以上のことができないのなら、むしろ目の前の仕事に集中して欲しいからです。
つまり、管理者は、すべての人に同じ話をするべきではなく、必要な事実を必要なだけ伝えることが求められます。
実はこの判断は、介護士のスキルは関係ありません。
むしろ、社会人として、サラリーマンが部下を持つようになって覚える人材育成の基本とも言えます。
もっと言えば、この大切さを知らなければ、組織を作り上げることもできません。
オムツ交換を覚えた頃から
こみちが未経験から介護業界に入り、特に介護現場で仕事を覚えていく中で、「現場を回す」ことができない人が一定数いることに気づきました。
こみちよりもずっと器用に作業できるベテランでも、「回せるない」人はたくさんいます。
もっと言えば、「回す」と「終えられる」は異なっていて、回すために利用者からの反論をすべて遮断してしまうと、それはもう介護ではありません。
トイレにも行かせない。食事を無理やり食べさせる。
そんな強制的な行為でしか回せないのなら、それは回すではなく、「終えた」に過ぎません。
一般的なデスクワークでは、割と手順やタイミングは自分次第です。
しかし介護の場合には「できる」だけでは不十分で、「その時にできる」が不可欠です。
10分ならできることを、8分しかない場面で終えられるとか、5分の時にどうすれば叶えられるのかを考えて実行できることが、実は介護士になって基本を覚えた後に必要となります。
ある意味で、そのような考え方が必要とされるのは、現場のリーダーになることが出てくる入職後半年から以降のケースでしょう。
新卒者場合には、介護の基本スキルを習得後に、段々と「回す」ための管理術を学ぶことになりますが、中途採用の中高年の場合、基本スキルを学んだ時点で、もう「現場を回せる」ことができるかもしれません。
ある意味ではそれを「即戦力」と呼ぶのかもしれませんが、意図的に意識しないとなかなか身につかないスキルなのかもしれません。
介護施設が求める「介護士」とは、まずは基本スキルが行える人ですが、そんな人は割とたくさんいます。
さらに言えば、彼らを使って、もっと大きなボリュームの仕事を担える介護士は重宝です。
それを理解した介護士には、施設としてもしっかりと評価し、少なくとも「期待していること」を示しましょう。
そうでないと、回せる介護士が業務から退き、一スタッフになってしまうからです。
すると現場は段々と動きが悪くなり、いつもギリギリの状況で余裕がなくなります。
スタッフとして働いてもやりがいはありませんし、利用者も居心地が悪く、場合によっては別の施設へと移動するかもしれません。
林立した地域では、入所者が集まらない事態にもなり、経営にも影響します。
「介護現場」を回せることは、簡単ではなく、しっかりとしたプロの判断があってこそなので、実際に回せるスタッフのことは明確に評価しなければ、普通は段々と施設から距離を取り、やがては条件のいい別の職場へと移動することになります。
職場の雰囲気が合わないで辞めるスタッフもいますが、次の段階になって「施設を離れる」ことにしたスタッフもいるはずです。
残ったスタッフは、回すことができない人ばかりになれば、急に職場の雰囲気が変わり、その理由になかなか気づけないかもしれません。
でも「回すこと」の中には、テクニックだけでなく、コミュニケーション能力もまた必要で、介護士の専門スキルとは言い切れない「仕事の流儀」とも言える技だったりします。