最近、介護現場で起こっていること
こみちの勤務している介護施設には、心の問題もあって継続的に働くことができない介護士がいます。
その人と同じ時間帯で働いたことがあるのですが、とても気の利く人であり、仕事も熟せる人なのです。
以前、こみちは介護士が他のサラリーマンとは異なると紹介しました。
特に仕事ぶりを評価する基準に違いがあることも書いたように思います。
介護士として評価される前提は、「仕事ができる人」ではなく、「穴を空けない人」なのです。
つまり、ドタキャンや病欠、遅刻などをせずに、職場に顔を出せることが不可欠とされています。
「なんだそんなこと!」
そう思う人もいるでしょう。
しかし、悪天候で普段から使用している公共機関が停止したらどうしますか?
車通勤で、渋滞に巻き込まれたような場合もあるでしょう。
基本的な考え方として、介護施設は定めれたスケジュール通りに働いてくれる人を求めています。
「道が混んでいたので…」そんな言い訳は求めていません。
今日は朝の6時から出勤して、明日は午前10時から、明後日は夕方から翌朝までと言った具合に、指定された時間帯に這ってでも来られる人が「いい介護士」なのです。
「アレ!? 寄り添いができる人は?」
そう思う人もいるでしょう。
しかし、案外と施設では見えない部分のケアよりも、見えるケアを大切にする傾向があります。
つまり、時間や提供したサービス内容が重要で、その提供方法などは二の次だったりします。
朝の9時に始める仕事
フロアーの担当になった介護士は、朝9時から朝食の片付けやオムツ交換を行います。
大体は2つのグループに別れて作業に入りますが、ドタキャンなどでシフトに変更があると、急に別のグループになることも少なくありません。
そして、それらとは別に、上司から個別に仕事を頼まれることがあります。
通常は、担当業務をこなしながら個別案件にも対応するのですが、中には頼まれたことをいいことにして担当業務から外れてしまう人がいます。
「〇〇さんは?」
「見ていないけど」
「手が足りないよ!」
「やるしかないよ!」
十分な配員がある時ならまだいいのですが、元々2人の配属で一人が抜けてしまえば、残された人が一人で全部しなければいけません。
稀に、1人しかいない作業で、その業務を行わずに、別の仕事へと流れてしまい、後で終わっていないことが分かり、周囲が大迷惑を被ったケースもあります。
ただ、サラリーマンとは異なり、個別の案件されも口頭によるものがほとんどで、「〇〇さんに頼まれた仕事があるんだ!」と言われたら、それがどれだけのボリュームでどれくらい時間が必要なのかも周囲には分からなかったりします。
一人抜け、二人抜け、三人抜けても、残された人だけで現場を回すのです。
今朝、こみちは約20名の利用者を相手に、2時間動きっぱなしでノルマをこなしました。
本当はもう一人配員がいたのですが、「別の部署に急用がある」と言われて見送ったばかりでした。
「急用」と言われて、「今ですか?」とは言いにくいものです。
仕事が立て込んでいることも分かったうえで言っているのだから、それだけ緊急なのだろうと。
結局、用件の内容まで分かりませんが、2時間も帰って来ませんでした。
その間、こみちがフロアー業務を一人で回すことになったのです。
フロアー内にいる利用者の安全確保を維持しながら、それぞれの好みに合った飲み物を提供し、手を挙げた利用者や居室からコールを鳴らした利用者には、トイレへと誘導します。
また、入浴を済ませた利用者の髪を乾かしたり、浴室では着せてもらえなかった衣類を着せたりもします。
コールが連続し、さらに手が何本も挙がることも珍しくありません。
さらには、「居室に来て欲しい」と個別案件を依頼されることもあります。
フロア内を小走りで行ったり来たりして、ヘトヘトになりながら業務を遂行します。
入浴担当になった介護士たちが戻って来た頃に合わせて、急用があると言った介護士も帰って来ました。
「〇〇は済んでる? 〇〇は?」
1人で終わらせたことよりも、できていないことを目ざとく見つけて確認して来ます。
「〇〇は済んでるいますが、〇〇はまだできていません」
「分かった!」
その時の「分かった」には、「ちょっと使えない奴だなぁ」というような雰囲気さえも含んでいるように聞こえます。
特に入浴担当だった人たちにすれば、誰がフロア業務をしたのかは問題ではありません。
スケジュール通りに終わっているか否かが問題なのです。
急用の介護士が「1人にお願いしたんだ」とでも言ってくれたら違いますが、黙って残り作業をし始めます。
恐い介護士となったこみち!?
新人介護士の一人が、上司に相談していたようです。
内容は不正確なものですが、「こみちが恐い」というものです。
少し前、別の先輩も同じようなことを言われたらしく、それで新人介護士との距離を置くようになりました。
相談したとされる上司からの呼び出しもないので、思い過ごしという可能性もありますが、マイペースで仕事をする新人介護士のやり方に指摘を入れた人は「恐い」になってしまうのです。
「厳しい」という表現かも知れません。
ただ、オムツ交換に通常の2倍も時間を掛けられたら、穴になった担当は誰がするのでしょうか。
「もう少し早くできないの?」
「エエ、こっちは頑張っているのに…」
ちょっと愕然とします。
介護施設で大切なのは、「穴を空けないこと」です。
どんなに頑張ったのかは重要ではありません。
そうなっているのに、「頑張っている」という精神論を掲げてきます。
食事の介助をする場合でも、新人はなぜだか二人の利用者を抱え込みます。
なんでも、以前に勤務していた介護施設では当たり前のようにしていたからだと言います。
そこで、こみちは服薬や下膳、口腔ケアなどを担当しました。
しかし戻ってみると、介助していた利用者たちの食事がほとんど進んでいません。
なぜか、別の利用者に呼ばれたと言って、その担当から急に抜けてしまったのです。
仕方なく食事の介助に入ると、済ませた服薬や下膳の担当グループにいます。
「何なの?」とは思いますが、先輩介護士にも同じような働き方をする人がいるくらいです。
同僚のことを言い出すと気が滅入るので、利用者との団らんにやりがいを求める介護士もいるはずです。
「終わった頃に戻ってくる」という働き方を止められないみたいなのです。
それでも、介護士は一般的なサラリーマンとは違います。
人よりも多く仕事をして実績を残しても、それで報酬が変わることはありません。
どんな風に過ごしても時間から時間まで「いる」ことが大切だからです。
「絶対に仕事量がアンバランスだ!」
そんな風に思って、顔つきが険しくなれば、「あの介護士は恐い(厳しい)」と言われてしまいます。
オムツとリハパン
皆さんはオムツとリハパンの違いをご存知でしょうか。
現職の介護士なら当然ですが、未経験者なら「名前くらいは知っている」という方もいるでしょう。
我々が使うパンツを布パンツとすれば、リハパンは同じようにパンツでありながら、多少の漏れをカバーしてくれます。
さらに、尿意や便意が曖昧になると、トイレに行きたいとも感じなくなるので、オムツにします。
ある意味、リハパンを使うなら「トイレ誘導」はセットなのです。
しかし、リハパンとは別にパットというものもあって、さらに漏れをしっかりとカバーしてくれます。
本来なら、リハパンにパットも装着するのは、トイレでの用足しを習慣として保ちつつも、大量に漏れた時にもカバーできるようにしているのです。
ところが、ある利用者がトイレ誘導を求めたところ、「パットを付けているのでそこでしてください!」と言い放ったのです。
「トイレに連れて行ってください! 漏れちゃいます」
「漏らしてもいいですよ。パットしているので」
そんなやり取りを知って、こみちが「トイレにお連れしましょうか?」と先輩に聞いたところ、「クセになるからいい」と拒絶しました。
たしかに、利用者の中には尿意が曖昧で、「トイレ」というものの、出ないケースも珍しくありません。
しかしそれなら、オムツになっているはずです。リハパンを付けている以上は、トイレに行く習慣を残しておきたいというケアプランになっているからでしょう。
みんながいるフロアーで、パットをしているからと言ってそこで用を足せますか?
介護士は本気で言ったのでしょうが、それはちょっと「自尊心」を無視しているように思います。
それとも、こみちの介護方針が甘いのでしょか。
少なくともこみちが利用者なら、そんなケアはされたくありません。